<社説>県議選の投票率最低 民主主義の土台を脅かす


社会
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 7日投開票された県議選の投票率は、前回の53・31%を6・35ポイント下回る46・96%となり、過去最低を記録した。

 新型コロナウイルスの感染拡大への懸念から、選挙活動の制約を余儀なくされた。とはいえ、県議選の投票率が初めて50%を割ったことは、民主主義の根幹を大きく揺るがす事態だ。
 市町村別の投票率を見ると、前回より上回ったのは北大東村だけ。久米島町は前回に比べ21・31ポイント低下した。県議選の投票率は第1回(1972年)から第6回(92年)まで70%以上を維持していた。第7回(96年)から60%台となり、第9回(2004年)から50%台に落ち込んでいた。
 もちろん今回投票率が下がったのは新型コロナウイルス感染症の影響が大きい。感染症予防で「3密」を避けるため、各候補者や陣営は有権者に接し、投票を呼び掛ける従来の選挙活動が十分に展開できなかった。従来にもまして、政策論争が不足していたことは疑いない。
 県選挙管理委員会は投票所の密集を避けるため、期日前投票の積極的な利用を呼び掛けた。期日前投票者数は過去最多だったが、投票日当日は悪天候に見舞われた。有権者の足を鈍らせる一因になっただろう。
 ただ、県議選の投票率が過去最低になった理由を外的要因だけに求めるのは誤りだ。コロナ禍で社会生活や経済活動に影響を受けた県民の多くが、生活により近い距離にあるはずの県議選に足を運ばなかった。この事実を重く受け止めなければならない。
 コロナ禍で十分な取り組みができなかったとはいえ、投票を促す原動力になるのは選挙期間中の運動だけではない。特に現職は、日々の活動で政策を十分に浸透させられなかったことを反省すべきだ。
 有権者の過半数が投票しなかったのは民主政治の危機だ。棄権すると自らの意思を政治に反映させる機会を失う。全てを他人任せにし、白紙委任する姿勢にほかならない。権力を握る者にとって「政治、選挙への無関心」という風潮は都合がいい。国民が黙っていれば好き勝手なことができるからだ。投票するのは自分自身のためだけでなく、子や孫への責任でもあるという意識を持つ必要がある。
 今回の選挙で特に残念だったのは名護市、うるま市、浦添市、石垣市の4選挙区で、定数と同じ数の候補者しか立候補せず、無投票となったことだ。四つの選挙区の無投票は第1回選挙と並んで過去最多だ。合わせて28万人余の有権者には選択の機会がなかった。
 コロナ禍で打撃を受けた県経済と社会生活の立て直し、新たな沖縄振興計画、貧困、福祉、教育と県政の課題は山積している。選挙は民主主義の土台となる大切な制度だ。
 当選した県議は、県民に寄り添った施策の実現と活発な議論で有権者を引き付ける政治活動を展開してほしい。