<社説>ミカンコミバエ急増 駆除の徹底万全期したい


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 特殊病害虫のミカンコミバエが県内で発見される事例が急増している。1986年に県内全域で根絶に成功したが、再び沖縄に定着しているとみなされれば、寄生する果実類を県外に出荷できなくなる恐れが出てくる。

 ミカンコミバエは成虫が果実の中に卵を産みつけ、幼虫が発生した果実は食用にはできなくなる。
 寄生するのはタンカンやシークヮーサーなどのかんきつ類、マンゴー、パパイア、トマトなど幅広い。出荷制限による農業への影響は甚大であり、徹底して駆除に取り組まなければならない。
 沖縄の農業の歩みは、虫との闘いだと言っていい。
 日本唯一の亜熱帯地域の沖縄は、高温多湿で年中病害虫が発生しやすい。生産物が病気や食害の被害に遭うばかりではない。病害虫が本土に持ち込まれるのを防ぐため、多くの農産物は県外への出荷が禁じられ、長年、農業振興の大きな障害となってきた。
 ミカンコミバエの根絶事業は、沖縄の日本復帰に伴い、国と県の共同研究として始まった。オスの成虫を引き付ける誘引物質と殺虫剤を混合し、その薬剤を染み込ませたテックス板(木材繊維板)を野外にばらまき、誘殺するという方法だ。
 取り組みが実を結び、82年に沖縄本島、84年に宮古群島、86年に八重山群島で根絶を確認した。大正11年(1922年)以降、沖縄から県外へのかんきつ類の出荷が禁止されていたが、ミカンコミバエの根絶によって青切りミカンやタンカンが県外に出荷できるようになった。
 ミカンコミバエは台湾や東南アジア地域などに生息しており、沖縄での根絶後も、寄生果実の海外からの持ち込みや、気流に乗って侵入してくるケースがある。近年、県内各地に継続して設置している駆除用のトラップに、ミカンコミバエが引き寄せられている事例が増えている。
 現在のところ、確認後速やかに駆除しているため一時的な侵入にとどまっているという。県や国は防除を強化するとともに、寄主植物の持ち込みを食い止める水際対策にも万全を期してもらいたい。
 各農家は病害虫の発生を防ぐため、果実の袋がけのほか、ビニールハウスやネットの破れを補修するなど、管理を徹底する必要がある。
 何より認識しなければならないのは、農場だけでなく、一般家庭の庭先が繁殖の温床になることだ。庭先で露地栽培されているマンゴーやグアバ(バンシルー)などに、卵が産みつけられている例も見つかっている。
 ミカンコミバエは夏場に繁殖が活性化するため、今の時期の警戒が重要だ。各家庭でも、落下した果実は放置せず速やかに処分し、こまめに庭先の清掃をするなどの対応をとってほしい。
 沖縄の農業を守るための行動を心掛けたい。