<社説>県コロナ議事録なし 決定の過程検証できない


社会
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 県の新型コロナウイルス感染症対策本部会議や専門家会議の議事録が作成されていないことが明らかになった。

 これでは意思決定の過程が検証できなくなる。不適切と言わざるを得ない。メモや録音記録などをチェックし、詳細な会議記録を早急に整えるべきだ。
 対策本部は玉城デニー知事が本部長を務め、副知事、政策調整監、各部長で構成される。この間、医師らでつくる専門家会議の提言を受け、渡航自粛要請や休校などの重要施策を決定してきた。
 県総括情報部の担当者は「会議では政策決定前の案も出てくる。記録を作って公文書として残すことはあまりない」と述べ、政策決定前のプロセスを記録する公文書は普段から作成していないと説明している。
 会議記録の作成に関する統一的なルールがなく、作るかどうかは個々の職員の判断に委ねられているという。
 公文書管理法の趣旨にもとる対応だ。歴史的事実の記録である公文書の価値を軽視しているとしか思えない。旧態依然とした文書管理のありようは早急に改めるべきだ。
 コロナ禍という未曽有の事態に直面し、県はどう対応したのか。どんな議論を経て対策を打ち出したのか。検証し今後に生かす上で、議事録が必要不可欠な資料であることは論をまたない。議事概要を公表するだけでは不十分だ。
 何よりも、県民に開かれた行政を目指すのか、それとも目指さないのか。玉城県政の根本姿勢が問われてくる。
 新型コロナ感染症対策を巡っては、専門家会議の議事録を政府が作成していないことが分かり、批判を浴びた。文書管理がずさんで情報開示に後ろ向きの安倍政権を反面教師としなければならない。
 公の情報を可能な限り開示することは、民主主義の健全な発展に欠かせない要素だ。北海道や愛媛県が対策本部の議事録を作成し公表しているのは、当然の対応と言える。
 玉城知事は「公文書の管理と情報提供については今後しっかりと精査して、必要な範囲で規定を決めていきたい」と述べた。意思決定の過程を透明化し説明責任を果たすのは使命だと心得てほしい。
 世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症は、国民がかつて経験したことのない災厄だ。人々の移動が活発化した時代を迎え、別の感染症が流行する事態も想定しておく必要がある。
 そのときに、会議の記録がなければ、一から議論し直さないといけなくなる。行政の遅滞につながり、人命まで脅かされかねない。
 もとより、会議に出席する人たちが無責任な発言をするはずがない。議事録を作成することによって、不利益を受けるとは考えにくい。
 県は、国民の知る権利を保障するため、あらゆる努力を怠ってはならない。議事録の作成と公開を強く望む。