<社説>待機児童1300人超 保育士の待遇改善急務だ


社会
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 子どもを保育園に預けたくても受け入れてもらえない。待機児童が社会問題となる中、解消には保育士不足が大きな壁となっている。

 ことし4月1日時点の県内の待機児童数は1365人で、5年連続の減少となった。前年より337人減った。市町村が認可保育施設を増設し、受け入れを増やしていることが奏功している。
 しかし、146施設で323人の保育士が不足したために、1220人の子どもが受け入れられない状況に陥っていることも県の試算で明らかになった。保育士が十分にいれば、待機児童の9割は解消できる計算だ。保育士不足は深刻だ。
 さらに申し込んだ子どもに対し待機児童が生じた割合を示す「待機児童率」は2・19%で、2019年時点の全国平均の0・6%を大きく上回った。依然として全国ワーストの水準で、保育ニーズに応えられていないことを示す。
 県内では各市町村で認可保育園の整備が進み、今年初めて、保育園に申し込む子どもの数より、保育園の定員が上回った。昨年10月からの幼児教育・保育無償化で申し込みが増えたにもかかわらず、保育園は十分補える定員を確保したのだ。
 それなのに受け入れられない子どもがいるのは、保育士が足りないからだ。待機児童を年齢別に見ると0~2歳児の合計が1150人で、全体の84%を占める。認可園は国の基準で保育士が担当する子どもの数が定められ、低年齢の子が多いほど保育士が必要だ。ここでも保育士不足が壁となる。
 保育の受け皿拡大と質の向上には保育士の確保が大前提だ。処遇を改善して、保育現場の人材難を解消しなければならない。保育士は命を預かるという重い責任を負い、体力の要る激務でありながら、保育士の平均年収は全産業平均を大きく下回っている。非正規雇用も多い。給与だけでなく、勤務シフトを工夫するなど職場環境を見直して、現場を離れた有資格者の復帰を後押しすることも必要だ。
 今年は前期の保育士試験が新型コロナウイルス感染症拡大防止のために中止され、900人以上が受験できなかった。保育士不足に輪を掛ける可能性もある。
 さらに特定の保育園だけを希望したなどの理由で待機児童に含まない「潜在的な待機児童」は1833人に上る。
 現状は保護者が保育園を選べる状況にはない。自宅から遠い保育園しか空いていないなどの理由で入園をちゅうちょする例もあるだろう。保護者の生活実態や細かいニーズに応え、質の高い保育を確保しなければ、待機児童は減っても潜在的待機児童は増えるという矛盾が生じる。
 誰もが安心して子どもを預け、働ける環境をどう整えるか。保育士不足を解消するため対策を早急に講じなければならない。