<社説>民間委託の情報開示 曇りなき透明性の確保を


社会
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 惰性で公金を扱っているようにしか見えない。

 新型コロナウイルス対策の持続化給付金事業を受託した一般社団法人サービスデザイン推進協議会が、経済産業省から請け負った事業14件のうち11件が競争入札ではなく有識者の審査で決まっていた。
 問題は、請け負った数々の事業の決め方だ。有識者はおろか、選定理由が不明なのだ。曇りなき透明性ある情報開示に向け早急に改めるべきだ。
 審査は、各有識者が公募事業者の提案を評価した採点表を経産省が集約し、最高点の事業者を選ぶ方法で行われた。
 経産省側は有識者のメンバーが誰なのか、誰がどんな評価をして、選定に至ったのか。理由など詳細を明らかにしていない。合理的な審査を経た選定が可能だったのか。有識者が対面で会議を開かないケースが多いというのに、議事録などは作成されているのか。疑問は尽きない。
 こうした審査方法は、同協議会が2016年に設立して以降、受託事業の大半で行われた。主な事業は17年度のIT導入支援事業(約499億円)、18年度の事業承継補助金(30億円)、19年度の教育用ソフトウエア導入実証事業(30億円)などが該当する。
 16年度に協議会が受託したおもてなし規格認証事業(4600万円)は、公募開始と協議会の設立日が同じとの指摘があり、応募の適格性の面からも不自然さがつきまとう。
 経産省は、専門的な知見が必要で価格の見積もりができない委託事業や、補助金事業の交付事務は有識者審査で事業者を決めてきたと説明する。
 行政が、不足する専門領域の知見を民間に頼り、委託する必要性は否定しない。しかし国民の税金で賄う事業の選定過程が、これほどまでにつまびらかにならないとあっては、見過ごせない。
 有識者審査という選定方法について、経産省は「有識者を公表すると、事業者側が便宜を図ってもらうために接触する恐れがある。評価が公になれば、事業者の今後の活動に悪影響を及ぼしかねない」との見解を示している。
 しかし競争入札だった持続化給付金事業を巡っても発注、受注側との癒着とみられても仕方ない関係が露呈した。
 給付金事業の入札前に、経産省側は、応札可能性のある協議会側と、別の団体より多くの時間を割いて、面会していたことが明らかになった。
 給付金事業を所管する中小企業庁の前田泰宏長官は17年、協議会の幹部とパーティーで接触していた。
 こうした振る舞いが新たな事業者の芽を摘み、参入障壁を設けるような悪しき慣習になっているとすれば、問題だ。さかのぼって全受託事業を検証する必要があろう。
 経産省は予算執行の透明性を図るため有識者ら第三者の検討会を設けた。この機会になれ合いがあるならば、絶ち、国民の不信を拭う最後の機会と、心して当たるべきだ。