<社説>石破氏の辺野古発言 新基地断念するしかない


社会
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 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に伴う新基地建設計画を巡り、自民党の石破茂元幹事長が「辺野古が唯一の解決策」とする政府方針に疑問を示した。新基地計画は既に破綻している。政府は断念するしか道はないはずだ。

 石破氏は共同通信加盟社論説研究会で講演し、新基地計画について「とにかくこれしかない、進めるんだということだけが解決策とは思っていない」と率直に語った。
 安全保障に明るい石破氏は過去に防衛相などを歴任し、辺野古移設を推進した。党幹事長時代の2013年には県選出国会議員らを移設容認に転じさせた。安倍晋三首相の後継候補として名前が挙がる一方、首相とは一定の距離を置く。その人物が計画に疑問を示した意味は大きい。
 辺野古海域には軟弱地盤が広がり、工事の完成は見通せない。政府は昨年、事業完了に12年、工費は当初の3倍近い9300億円と計画を修正したが、県試算では最大2兆5千億円余りに膨らむ。
 中国のミサイル射程内にある沖縄での基地建設は軍事的にも疑問視されており、在沖米海兵隊のアジア太平洋地域への移転・分散計画との矛盾を指摘する声も根強い。
 石破氏は政府が地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備を合理性がないとして撤回したことに関し、辺野古について問われ「コストも時間も技術の問題も指摘の通りだ」と述べ、計画を検証する考えを示した。正当に検証すれば実現困難であることはすぐに分かるはずだ。
 沖縄の基地負担を巡ってはこのほど、復帰前年の1971年に米軍横田基地(東京)のF4戦闘機部隊が嘉手納基地に移駐した詳しい経緯が米公文書で明らかになった。米国は当初移駐先に米本国や米領グアムを検討していたが、米軍撤退を不安視する日本側への配慮や日本本土での反米軍感情の高まりを背景に嘉手納に変更され、本土から米空軍戦闘機は姿を消した。
 米軍戦闘機は80年代半ばに三沢基地(青森)に再配備されるなどその後変遷するが、戦後27年米の統治下にあった沖縄に復帰を挟んで在日米軍が一段と集約されたのは、米軍の戦略よりも日本の政治的事情が優先された結果であることが改めて浮かぶ。
 合理的根拠もなく沖縄に新たな基地負担を強いるような愚行はもう許されない。
 辺野古の軟弱地盤を巡っては、さらに衝撃的な事実が判明した。独自に調査している専門家チームは、震度1以上の地震が発生すれば新基地の護岸崩壊の危険があるとの解析結果をまとめたのだ。
 専門家らは河野太郎防衛相らに文書を送付し、同様の解析を行って結果を公表するよう求めている。政府は真摯(しんし)に対応すべきだが、辺野古の新基地建設にこれ以上巨額の税金を投じることに合理性がないことは明らかだ。速やかに工事を止めるべきである。