<社説>熊本南部豪雨 被害者救助に全力尽くせ


社会
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 深夜の暗闇で起きた災害である。猛烈な雨と荒れ狂う川のごう音に、命の危険を感じた人々の恐怖は計り知れない。急激な浸水や土砂崩れから逃げることができず、多くの犠牲者が出てしまった。

 3日から4日にかけて熊本県南部を襲った豪雨により、6日午後9時現在、49人が死亡し、1人が心肺停止、11人が行方不明となっている。山間部を中心に救済の手が届いていない地域もあり、被害はさらに広がる可能性がある。消防隊など関係機関は、行方不明者の捜索と救助に全力を尽くしてほしい。
 避難者の生活援助をはじめ、土砂災害、浸水などの被害者支援も喫緊の課題だ。政府は、被災自治体を財政支援する激甚災害の早期指定など、あらゆる対応策を講じるべきだ。
 今回の豪雨は、前線の影響で積乱雲が同じ場所で連続発生して大雨を降らせる線状降水帯が原因とみられている。日本で発生する多くの豪雨は線状降水帯が原因と考える専門家もおり、警戒すべき気象現象だ。気象庁は3日の段階で大雨を予測、24時間雨量を熊本県内の多い地域で200ミリと予想し、呼び掛けていた。
 しかし、実際の降り始めからの雨量は場所によって500ミリを超えた。線状降水帯の発生は上空の風や地形の影響を受け、現代の技術でも予測が難しいという。気象庁は3日の日中に会見を開いて避難を呼び掛ける余地はあったが、予想雨量の少なさなどからタイミングを失った。
 くしくも2年前の同時期に起きた西日本豪雨でも避難周知の在り方が問題となった。気象庁は当時、過去最多となる9府県に大雨特別警報を出して最大級の警戒を求め、自治体も住民に避難を呼び掛けた。しかし増水した川に近づいたり、避難せずに自宅で土砂崩れに巻き込まれたりして被害に遭った人々もいた。
 大雨特別警報は基準を満たす必要があり、災害が起きてから発表される可能性が高い。今回発表は午前4時50分と遅かった。早い段階での避難呼び掛けや周知方法の課題が改めて浮き彫りになった。
 被害が拡大した原因として地形も挙げられる。被災地は、盆地を流れる球磨川が山間部に抜ける出口に当たり、川幅が狭まって水があふれやすい形状だ。普段から地形を考慮した避難・防災計画、インフラ整備、まちづくりなどの備えが必要と言える。
 入所者14人が死亡した特別養護老人ホームは、避難計画を作成し訓練も年2回実施していたという。それでも被害は大きかった。災害時に自力で移動できない災害弱者への対応は大きな課題だ。全国では避難計画作成でさえ進んでいない。
 こうした課題は沖縄も共通する。予測しにくいゲリラ豪雨は全国的に多発傾向にある。被害が拡大した今回の原因を検証し、普段の備えに教訓を生かすことが肝要だ。