<社説>非効率石炭火力削減 再エネ拡大の道筋示せ


社会
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 経済産業省は、二酸化炭素(CO2)の排出が多い非効率な石炭火力発電所を、2030年度までに段階的に休廃止させる方針を表明した。石炭火力発電を推進する姿勢に国際的な批判が集まっている日本政府として、地球温暖化の原因となるCO2の排出抑制をアピールする狙いがある。

 ただ、政府は今後も「高効率」の石炭火力の建設は認めるといい、30年度の電力構成のうち26%は石炭火力を維持する方針だ。英国やドイツなど欧州を中心に、先進諸国の多くは石炭火力から撤退する目標に向かっている。脱石炭火力という世界の潮流に対し、日本政府の方針はまだ後ろ向きだ。
 日本も石炭火力の全廃の時期を定め、代替として再生可能エネルギー(再エネ)拡大の道筋を示すべきだ。
 島国の日本で、さらに離島県の沖縄はエネルギー問題の縮図だ。沖縄電力の発電電力量のうち石炭発電が6割を占めている。全国の大手電力会社の中で最も高い割合だ。
 一方で、沖縄は本土と海を隔てて独立した電力系統となっているため、他県と電気を融通し合うことができない。代替電源のないまま石炭発電の休廃止を進めれば、電力の供給不足や料金高騰を招くことになり現実的ではない。
 梶山弘志経産相は「地域性を考えながら、どういう経過措置が必要か考えたい」と語っており、沖縄については地域特性を踏まえた独自の検討が必要になる。
 その上で、やはり石炭火力に電力供給の6割を依存する沖縄のエネルギー構造は転換していかなければならない。豊かな自然を誇る沖縄のイメージにもふさわしくない。
 沖縄県は「エネルギービジョン・アクションプラン」で、県内の一次エネルギー供給に占める再エネ導入率を20年度までに5%に引き上げる目標を掲げている。だが、18年度の実績は1・4%にとどまっている。
 沖縄が観光のモデルとしてきたハワイは、45年までに発電量に占める再エネの割合を100%にすると宣言している。資源に乏しい同じ島嶼(とうしょ)地域として、エネルギーの地産地消を目指す沖縄社会の本気度が問われている。
 再エネの拡大は経済を阻害するものではない。むしろ今後は、温室効果ガス削減の国際的な合意の下で、化石燃料に頼った経済活動は大きな制約や批判を伴うことを心しなければならない。
 天候などに左右される再エネは出力変動が大きいといった課題がある。安定的な系統接続や安価な蓄電池の開発といった技術的な課題を克服できれば、普及のボトルネックは一気に取り払われる。
 沖縄発の新技術が生まれることは、競争力のある産業を創出することにもつながる。研究開発への積極的な投資や補助を通じ、エネルギー分野のイノベーション(技術革新)を促す戦略が重要だ。