<社説>普天間爆音上告棄却 なぜ生存権より安保か

 司法は基本的人権を保障する役割を自ら放棄したと言わざるを得ない。

 米軍普天間飛行場の周辺住民が、米軍機の飛行差し止めや過去、将来分の騒音被害の損害賠償を国に求めた第2次普天間爆音訴訟で、最高裁は住民側の上告を退けた。飛行差し止めや日米両政府による「普天間基地提供協定」の違憲確認を認めなかった昨年4月の福岡高裁那覇支部の判決が確定した。
 最高裁は米軍基地から派生する騒音被害に苦しむ沖縄県民を救済することなく、「第三者行為論」を盾に、米軍機の飛行差し止めなどの訴えに目を向けようとしなかった。憲法25条で保障された「生存権」よりも「安全保障」を優先する姿勢が際立っている。こんな差別的な状況は許されない。
 普天間爆音訴訟は2度にわたり普天間の騒音被害について違法性を認めている。昨年4月の福岡高裁那覇支部の判決は「受忍限度を超える違法な権利侵害だ」と判断し、爆音から来る影響を「会話やテレビ視聴、勉強など日常生活のさまざまな面で妨害され、精神的苦痛や睡眠妨害、高血圧の症状も生じている。これらはうるささ指数(W値)の上昇に伴って増加している」とした。住民の生活や健康が脅かされる爆音の異常さをはっきり認めている。騒音被害の賠償も「受忍限度を超えている」として、国に約21億2千万円の支払いを命じた高裁判決が確定している。
 しかし、住民が最も望む「静かな夜を返せ」という願いを高裁は聞き入れなかったため上告していた。
 日米で結んだ騒音防止協定では午後10時―午前6時までの飛行を制限するが、あくまで米軍の運用に任され、この時間帯にも1日平均10回を超える騒音が観測されている。しかしながら高裁判決は、飛行差し止め請求について「飛行場の管理権は日米安全保障条約や日米地位協定上、米側にあり、国が制限できる立場にない」とする「第三者行為論」によって退けた。
 さらに今回、最高裁は上告理由・上告受理理由がないとして、第三者行為論を見直そうとすらしなかった。「安全保障」の名の下に判断を回避し続けている。
 普天間飛行場の返還が発表されてから24年が過ぎた。日米両政府は「普天間の危険除去」を唱えながらも、現実には普天間飛行場の危険回避策は講じていない。2012年には事故率が高く低周波音の被害が指摘される垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを普天間に配備した。04年の米軍ヘリ沖国大墜落や17年の普天間第二小への米軍ヘリ窓落下など繰り返される事故にもかかわらず、危険性を放置し続けている。
 住民側は第3次訴訟を提起するという。国によってもたらされている市民の被害を司法が黙殺する以上、繰り返し問われることになろう。



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