<社説>Go Toトラベル 延期し感染防止優先を

 政府が22日から実施予定の観光支援事業「Go Toトラベル」に批判が強まっている。東京を中心に首都圏で新型コロナウイルスの感染者が増加しており、旅行を促進することで感染を全国に広げかねないからだ。

 事業開始を延期し、水際対策の徹底など感染防止を優先すべきだ。当面は「Go To」予算を地域限定の経済振興に振り向け、地域の実情に合った対策を拡充することが現実的だ。
 政府は16日になって東京を対象から外して事業を開始する方針に転換したが、批判をかわすためだけのあまりに小手先の対応だ。東京と経済圏を同じくする近隣など感染者が増加している地域はほかにもある。東京発着だけ除外しても焼け石に水だ。
 経済活動のアクセルを踏むことで第2波を招いてしまえば、営業自粛や移動制限に耐えて感染を抑えてきたこれまでの努力が水泡に帰す。
 「Go Toトラベル」を巡っては、感染再拡大地域から感染者の流入を懸念する声が自治体首長から相次いでいる。しかし、政府は「地方には早く進めてほしいとの切実な声がある」として、8月だった開始予定を前倒ししてまで実施にこだわってきた。
 経済対策の“目玉”と位置付けるあまり、実施ありきの姿勢で不安と混乱を広げてきた責任は重い。感染拡大防止と社会経済活動の両立を図る重要な局面にもかかわらず、政権の対応に不信が募る。
 もちろんコロナ禍で打撃を受ける観光業界の支援は急務だ。沖縄でも多くの事業者が「Go To」の開始に期待して準備を進めている。
 だが、拙速な対応で感染を拡大させてしまえば観光業の回復はさらに長引いてしまう。旅行者を迎えることに県民が身構えてしまうことも観光立県にふさわしくない。
 沖縄も感染拡大のリスクと無縁ではない。米軍基地内における大規模なクラスター(感染者集団)の発生だ。米軍関係の感染者数は7月だけで135人に上る。米軍関係の感染者と接触したタクシー運転手の感染が見つかった。沖縄観光の安心を提供するためにも、米軍関連の感染を収束させ、再発防止策を示さなければならない。
 九州はじめ国内各地で記録的な豪雨の被害が出ているさなかだ。その被災地では感染の流入を防ぐため、災害支援のボランティアを地元県民に限らざるを得ない状況がある。現時点の観光キャンペーンは時期尚早だ。
 開始時期とともに、約1・7兆円の事業費の運用も見直しが必要だ。予算の一部を自治体や事業者の直接支援に振り向けることは、有効な経済対策になる。その際、自治体の裁量を増やすべきだろう。
 県内旅行の推進で沖縄県が実施した「おきなわ彩発見キャンペーン」が当初の予算5億円を使い切り、第2弾に至っているのは好例だ。



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