<社説>米軍コロナ感染拡大 日本の防疫体制適用せよ

 在沖米軍基地での新型コロナウイルス感染拡大が県民の命や健康を脅かす深刻な事態となっている。

 県内の米軍関係の感染者数は20日現在143人に上る。米軍を出入りする男性タクシー運転手の感染が確認され県民に不安が広がっている。普段から米軍由来の事件事故や騒音などに苦しむ県民にとって新たな基地負担と言える。
 最大の問題は防疫体制が米軍任せになっていることだ。背景には日米地位協定があり、基地内では米側の検疫手続きが適用される。万全な水際対策を講じたくても米軍の裁量に委ねられる。検疫の実態は不透明で日本側は米軍の報告を検証するすべもない。
 地位協定の見直しは当然である。まずは日本の防疫体制を米軍関係者に適用することを急ぐべきだ。
 米国は感染者数と死者数が世界最多で入国拒否の対象国だ。しかし米軍人は日米地位協定によって、入国拒否の対象外となっている。来日する際に民間空港を使わず軍用機などで在日米軍基地に入る米軍関係者について日本政府は、氏名はおろか人数さえ把握できていない。
 そもそも米軍は自ら課す予防策さえ徹底できていない。県内米軍基地で発生したクラスター(感染者集団)の原因について在沖米陸軍の大佐は、人事異動に伴って到着した人員が行動制限に従わなかったことや、大人数の集会に関するソーシャルディスタンス(社会的距離)の指示に従わなかったことを指摘している。
 米軍は人事異動の際、米本国など異動元と日本でそれぞれ2週間の隔離措置を課している。しかし在沖米軍関係者の感染源が米本国だとすれば、隔離措置に抜け穴があった可能性が高い。
 日本政府は、米国を出国する際と、日本への入国後にそれぞれPCR検査を米軍関係者全員に義務付けるよう要請し、米側はその方向で検討しているという。日本政府は米側の報告をうのみにせず、隔離措置なども含めた米側の防疫体制を検証すべきだ。
 在日米軍が感染防止に欠かせない感染者の行動歴を公表しないことも問題だ。在韓米軍は感染判明の経緯や隔離情報などを積極的に公開し、米軍関係者は隔離措置の前後ともPCR検査を実施している。オーストラリアは感染予防のため米海兵隊のローテーション配備の在り方を変更させた。この対応の違いは地位協定に起因する。
 日本政府は、県や県議会が求める地位協定の見直しに応じない姿勢だ。このままだと日本国内でコロナが収束しても、米国が収束しない限り、沖縄は感染の危険にさらされ続ける。県民の命や健康だけでなく、経済への影響も懸念される。9・11テロ後、観光客が激減したような状態が恒常化する恐れもある。コロナ長期化を見据え、日米政府は早急に地位協定を見直すべきだ。



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