<社説>子どもの貧困率13% コロナで格差拡大許すな


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 厚生労働省の国民生活基礎調査で、子どもの貧困率が13・5%だった。3年前の前回調査から改善が見られず、依然として子どもの7人に1人が貧困状態にある。

 調査は新型コロナウイルス感染症の影響を受ける前の2019年時点であり、コロナ禍のさなかで現状はより悪化していると考えられる。子どもたちが不安定な生活を強いられることがないよう、家庭の経済格差を広げないためのコロナ対策を急がなければならない。
 子どもの貧困率が全国平均の2倍という沖縄はさらに深刻だ。県が独自に算出した15年度の沖縄の子どもの貧困率は29・9%。3人に1人が貧困状態に置かれている。
 貧困の連鎖を断つために、親の経済状況にかかわらず全ての子どもが等しく学習を受ける機会を保障しなければならない。だが、実際には家計の差が教育の格差につながってしまっている。
 沖縄県の19年度の高校生調査で、困窮世帯では生徒の49%でアルバイトの経験があり、保護者の88%が経済的に塾に通わせられないと回答している。家庭の困窮が学習機会や意欲を奪い、進路にも影響を及ぼしている。
 その最大の要因は、教育費に対する公費負担の低さだ。経済協力開発機構(OECD)によると、16年の国内総生産(GDP)に占める教育の公的支出の割合は、比較可能な35カ国中で日本は最下位だ。教育支出の多くを家計で負担しているため、親の経済状況によって子どもの学びが左右されてしまう。
 子どもの貧困を解決するには、政府や自治体が教育予算を大きく拡充し、家計の負担を軽減することが何よりも欠かせない。
 それと同時に、新型コロナの影響による休業や解雇が増える中で、子どもたちの学びを支えるためにも世帯への直接の支援を急ぐ必要がある。
 NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の4月のアンケート結果で、母子家庭の54・4%が新型コロナの影響で「収入は減る」「なくなる」と回答した。低賃金や不安定な雇用条件にさらされる世帯ほど、感染症のしわ寄せを大きく受けている。
 学校の一斉臨時休校では、ひとり親世帯など子どもの面倒を見るため仕事を休まざるを得ない世帯で収入が落ち込む影響が出た。休校中は食費がかさみ、食事が満足に取れない子どもたちがいたことも報告されている。
 感染症対策としてオンライン授業の活用が進んでいく方向だが、通信環境の有無によって学習格差が生まれかねない。感染の第2波が来るまでに、子どもたちの養育・教育環境の対策は急務だ。
 児童手当や児童扶養手当の引き上げ、遠隔授業に必要な通信環境などの無償提供、授業料の減免、親の雇用確保など、困窮世帯の親子を取り残さない手厚い支援が必要だ。