<社説>辺野古9度目の訴訟 国の強権許さない判決を

 この国の地方自治の在り方が再び司法で問われる。

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けて沖縄防衛局が申請しているサンゴ類の移植について県は22日、国を相手に福岡高裁那覇支部に訴えを起こした。6月に総務省の第三者機関・国地方係争処理委員会が県の審査申し出を退けたことを不服とした。
 県は地方自治法に基づき「農林水産省がサンゴ移植を許可するよう県に指示したことは違法だ」と主張し、指示の取り消しを求めている。これに対し農水省は「知事が許可しないのは違法なので、それを正す指示は適法だ」と主張する構えだ。農水省の指示が妥当かどうかが争点となる。
 裁判所は建設ありきで強権を行使している国を是認する判決を下すべきではない。是認すれば、この国の地方自治に大きな禍根を残す。
 辺野古新基地を巡る裁判は9度目となる。地方自治体が司法の場でここまで国と争うのは極めて異常な事態だ。県が訴訟を繰り返す背景には、辺野古新基地建設に反対する県民の民意がある。
 沖縄では辺野古埋め立ての賛否を問う県民投票をはじめ、県知事選や国政選挙などで何度も建設反対の民意を示してきた。そもそも国が県民の民意を尊重すれば、訴訟は必要ない。
 国と県の訴訟合戦は、沖縄では民主主義が機能していないことの表れだ。全国民はまずそこを意識し、危機感を抱く必要がある。県が国を相手に訴える行為は、何度も民意を示しても建設工事を強行している国に対する抵抗である。逆に言えば、国が強権的に基地を沖縄に押し付けている証しだ。
 一方、これまでの訴訟では何度も地方自治の在り方も問われてきた。今回の訴訟でも、それが焦点となる。極めて全国的に重要な問題と言える。
 玉城デニー知事は「農水省の是正指示は知事権限を奪うことになりかねず、地方自治の観点から大きな問題がある。裁判所は公正に判断してほしい」と述べた。国は、許可条件がそろっているのに標準処理期間の45日を超過してもサンゴ移植の許可を示さない県の姿勢が違法だとして是正指示の違法性そのものに踏み込まず、門前払いするよう司法に求めるとみられる。
 一方で国は大浦湾の軟弱地盤に対応するため県に設計変更の承認を求めている。玉城知事はこれを承認せず、訴訟に発展する可能性がある。今回の裁判はその前哨戦とも言える。埋め立て承認撤回を取り消した国の決定は違法だとして県が提訴した「抗告訴訟」も並行中だ。
 これらの判決も地方自治の在り方に大きく影響する。裁判所はこれまで地方自治法に基づく県の訴えに対し問題の中身に触れることを避けてきた。今回の訴訟は形式論で終わらせず、実質的な審議を尽くし、正面から判断を下すべきだ。



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