<社説>香港の立法会選挙 民主派参加し信を問え


社会
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 9月に行われる香港立法会(議会)選挙の立候補者受け付けが始まり、選挙戦が本格化した。民主派は初の過半数獲得を目指すが、中国の習近平指導部は「香港統治権の奪取」と見なしており、断固阻止する構えだ。

 多くの民主派の立候補資格を香港国家安全維持法(国安法)違反などを名目に選挙から排除すれば、高度な自治を認めた「一国二制度」の否定につながる。民主主義の根本原理は参政権である。中国は香港の選挙に干渉してはならない。民主派を参加させて有権者の信を問うべきだ。
 立法会は、任期4年で定数は70。親中派に有利な選挙制度と指摘され、2016年の選挙で親中派が過半数を獲得している。民主派は立法会選挙に向けた予備選を実施し、主催者目標の3倍を超える約61万人が投票した。強固な支持が示された民主派は、立法会選での初の過半数獲得に望みが出たと歓迎した。
 国営通信新華社は評論の中で、民主派が実施した予備選を「非合法」と断定し「反中乱港(反中的で香港を混乱させる)勢力が香港の統治権を奪うことは絶対に許さない」と強調。民主派の狙いは「議席の過半数獲得を実現し、香港の統治権を奪取することにある」と断定し、警戒感をあらわにした。
 今回の民主派候補には「香港人としてのアイデンティティー」や「強権への抵抗」を主張し、中国への対抗意識の強い若手が多い。そのうちの一人が14年の香港大規模民主化デモ「雨傘運動」のリーダー黄之鋒(こうしほう)氏だ。
 黄氏らは会見で、香港基本法(憲法に相当)の順守を誓う確認文書に署名しないと表明した。基本法は「香港は中国の不可分の一部」などと規定しているからだ。
 中国の習近平指導部はこうした若手民主派らを急進的と見なし、民主派全体で議席の過半数を獲得する事態を絶対に容認できない一線とみる。4年前の前回選挙では、立候補届け出後に計6人が「独立派」と認定され、立候補資格が認められなかった。今回はその2倍程度が排除される恐れがある。
 香港紙などによると、新型コロナウイルスが再び流行し始めた香港で感染拡大を防ぐという名目で、9月の立法会選挙を延期すべきだとの主張が親中派陣営から出てきたという。
 6月末に中国政府による香港の抗議デモ取り締まりなど、統制強化を目的とした国安法が施行された。香港の将来に関わる問題であるにもかかわらず、立法会で議論することなく決められた。
 中国に対する市民の反感が強まり、親中派にとって厳しい選挙情勢となっていることが立法会選挙延期論の背景にあるとみられる。
 人権や自由が失われていく中で、香港の未来は香港人の手に委ねるべきだと重ねて主張したい。