<社説>嘉手納F15部品落下 日本の航空法を適用せよ


社会
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 空の安全を脅かす行為を何度繰り返すつもりなのか。米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が4日、飛行中に重さ約3・6キロの金属製部品を落下させた。落下場所は不明で、陸上に落ちた可能性もある。

 住民の命に関わり、即時の飛行停止が必要だ。ところが落下の原因が明らかでないにもかかわらず、嘉手納基地はF15の飛行を続行している。事態の重大性に対する認識があまりにも欠如している。
 航空法は航空機からの物投下を禁止している。ところが日米地位協定に基づいて米軍は日本の航空法の適用を免れている。このため航空機関連事故を繰り返しながら、平然と沖縄で訓練が続けられる。
 日本政府は地位協定を抜本的に改定し、日本の航空法を米軍にも適用する必要がある。それができないのならば、老朽化した欠陥機F15を直ちに撤去するしかない。
 地元の再三の抗議や再発防止の要請にもかかわらず、米軍機の部品落下や海上での墜落事故が繰り返されている。
 今年だけでも、1月25日に米海軍のMH60ヘリコプターが那覇市から約170キロの公海上に墜落し、直後の同29日には米軍が投下したパラシュート付きの箱が民間地域に落ちる事故が伊江島で起きた。2月には嘉手納基地で訓練中のFA18戦闘攻撃機が給油パネルを落下させている。
 日本復帰以降、2019年12月末までに発生した米軍機関連事故は811件に上る。月1件以上の事故が起きている計算だ。このうちF15が320件を占め、機種別で最も多くの事故を起こしている。
 F15は1979年に嘉手納基地に配備されてから41年もの年月が経過している。機体の老朽化が事故の多発を招いている。加えて米国の軍事費削減に伴う整備不良が危険度に拍車を掛けている。
 今回落下した「イーグルクロー」と呼ばれる部品は機体に弾薬を固定するための金具で、専門家は「簡単に外れる部品ではない」(航空評論家の青木謙知氏)と指摘する。物理的、人為的に事故が起きる危険性が高まっている。
 欠陥だらけの状況にもかかわらず、F15は部品落下後も訓練を続行している。さらに、参加している訓練は嘉手納基地で7月末から実施している空軍、海軍、陸軍、海兵隊の4軍合同演習「ウェストパック・ラムランナー」だ。在沖米軍関係者の間で新型コロナウイルスの大規模クラスター(感染者集団)が確認されている中で合同演習を繰り広げていることに、米軍の常識を疑う。県民に不安を生じさせ、経済的な損害にもつながっている感染症の抑え込みに傾注する時のはずだ。
 F15の飛行続行について米空軍は、本紙の取材に「即応性を維持し、自由で開かれたインド太平洋地域を守るため訓練を続ける」と答えた。部隊の練度向上を優先し、地域住民の人命を軽視する態度であり、断じて許されない。