<社説>コロナ禍の女性就労 共助と格差解消の契機に


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 コロナ禍の今、働き方が大きく変容を迫られている。その影響は、特に女性に現れている。学校や保育園の休校、休園に加え、在宅勤務で育児や家事を一身に背負う。人によっては仕事を失い、収入が絶える事態も伝えられる。暮らしの窮状が随所に顕在化し始めている。

 男女の役割分担の意識を変えて共助の仕組みを整え、男女格差の解消を実現したい。
 住宅メーカーが小学生以下の子どもがいる従業員300人にアンケート調査をした。在宅時間の増加が女性にしわ寄せになっていないかを聞いたところ、7割の女性でストレスが上昇したという。
 学校の休校などで仕事を休み、子どもの世話をしなくてはいけない女性も多い。それに伴い家事の負担が増えたことが一因とみられている。男性は5割だったというから家事の分担は依然、偏っているといえよう。
 国の調査では「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」という考え方に反対の人は6割に上る。意識と実態がかけ離れている。
 夫婦共働きが増える中で、育児や家事に対する一方的な思い込みによる役割分担の意識が社会の根底に残っている。政府が7月末に決定した2020年版男女共同参画白書は、妻が育児と家事に充てる時間は夫の2倍超と、妻に負担が集中している実態を明らかにした。内閣府が男女計約1万4千人に調査したところ、仕事がある日の過ごし方は、夫婦2人の世帯で、家事時間は妻が夫の2・6倍、子どものいる世帯になると、妻が夫の2・8~3・6倍の負担をしている。育児時間は2・1~2・7倍に上る。
 コロナ禍前の調査ではあるが、妻の負担は増えても減っていることはないだろう。男性の家事時間は少しずつ増加しているとはいえ、フェアな関係性が築かれているとは到底言えない。
 こうした意識のひずみが社会に広く、根強く残っているのが男女の賃金格差である。厚生労働省の19年の賃金構造基本統計調査はフルタイムで働く人の賃金で男性を100とした場合、女性は74・3だ。賃金格差が女性の就労を補完的とみる意識につながっている。
 働く女性の半数以上が雇用の調整弁として非正規雇用で扱われている実態は見過ごせない。コロナ禍で仕事を失い、それが即、貧困に直結するのは特に一人親の母親だ。
 そんな窮状にある女性たちの声が本紙でも伝えられている。息子と母親の3人で暮らす女性は昼間に会社勤めをして、16万円の収入の不足分を夜間の仕事で補う。掛け持ちの仕事で生活は成り立っていたが、夜の仕事を失い、家計は限界を迎えている。
 食料支援など一人親の母を支える共助の取り組みも始まった。コロナ禍という非常時に弱い立場へしわ寄せがゆく社会であってはならない。