<社説>首相の連続在職最長 県民に寄り添わない政治


社会
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 安倍晋三首相は24日、第2次内閣発足からの連続在職日数が2799日となり、歴代最長となった。

 「安倍1強」と言われ、民意を無視し地域社会を分断する政治手法は、米国統治時代の沖縄の高等弁務官をほうふつとさせる。歴代政権の中で、これほど県民に寄り添わない政治があっただろうか。
 連続在職日数が長い首相を振り返ると、2位は安倍首相の大叔父・佐藤栄作氏。沖縄の施政権返還を実現した。3位の吉田茂氏は、サンフランシスコ講和条約や日米安保条約を締結した。では安倍政権は一体何を成し遂げたのか。
 長期政権となった自民党の3首相と沖縄の関わり方に共通点がある。日米同盟安定のために沖縄を利用してきたことである。
 歴代3位の吉田首相は、沖縄を日本から切り離したサンフランシスコ講和条約締結時に政権を担当している。
 講和条約交渉が東京で行われた1951年1月30日、ダレス米特使に対し、講和後の沖縄の取り扱いについて「バミューダ方式(99年間の租借)」で沖縄を米国に貸すことを提案している。日本が独立を果たした際、国の安全を米国に守ってもらう代わり、沖縄を差し出すという内容だ。首相の提案は、天皇が長期の貸与(リース)を申し出た47年の「天皇メッセージ」を具体化するような内容となっている。
 2位の佐藤首相は、沖縄返還を実現したことで知られる。
 しかし、日米が沖縄の施政権返還で合意した69年11月の首脳会談で、緊急時に核を再び沖縄に持ち込む密約をニクソン大統領と交わしていた。米軍が負担すべき沖縄の米軍用地の原状回復費や、米国の短波放送中継局の解体移転費用についても、日本側が肩代わりするという密約を交わしている。
 その佐藤首相を抜いて1位に躍り出たのが安倍首相である。第2次政権発足後、「唯一の解決策」として一貫して米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を進める。対米交渉によって、辺野古以外の解決策を見いだそうとしない。
 安倍政権は「沖縄振興特定事業推進費」を新設した。県を通さず国が直接市町村へ交付できるため、国の関与の度合いが強まった。国の施策に沿う自治体を優遇する新たな「アメ」として、地域分断に使われる懸念は拭えない。
 かつて高等弁務官が、沖縄統治のため琉球政府を通さず直接市町村に配分した高等弁務官資金の手法と似ている。
 民主主義を形骸化させ、力で押し切ろうという姿勢も際立つ。「自治は神話」と強弁し、都合のいい布令を繰り出し直接統治したキャラウェイ高等弁務官のようである。
 「県民に寄り添う」と繰り返すが、選挙で辺野古新基地建設反対の民意が示されても無視する。少数者に負担を押し付けてはばからない。この長期政権が県民に弊害をもたらしていることは間違いない。