<社説>小中高校コロナ対応 学習環境の根本的改善を


社会
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 新型コロナウイルス感染拡大による県内学校現場の混乱や課題を、沖縄社会全体の問題として捉える必要がある。

 琉球新報や沖教組、高教組が共同で教職員を対象に実施したアンケートで、休校した場合、オンライン学習に対応できると答えた小中学校の教職員は9・9%にとどまった。高校・特別支援学校はコロナ禍以前から取り組んでいた学校もあるため、「ある程度」を含め59・9%が対応できると回答した。
 一方、学校再開後の勤務時間について小中の38・5%、高校・特支の38・9%が「長くなった」と答え、多忙化している実態が判明した。学習の遅れや、それに伴う進路への影響だけでなく、学校行事の中止などによる子どもたちの精神的落ち込みへの懸念も強いことが分かった。
 アンケート結果から見えてくるのは、コロナ禍の長期化に備え、学校教育を取り巻く環境を根本的に改善する必要性だ。優先順位を付けながら、改善に向けた短中長期的課題を整理し、解決に取り組むべきである。
 アンケートによると、消毒作業や換気など3密防止、検温やマスク忘れの対応などが教職員の負担になっている。県内感染者数は7月下旬から爆発的に増え、市中感染が広がった。身近に迫る感染の危険から子どもたちを守るのは急務で、しかるべき対応だ。
 しかしその作業を全て教員任せにすれば、コロナ禍が長引くほど負担は増え疲弊する。中長期的に見ると問題は一層大きい。教員の負担軽減は焦眉の課題だ。学校現場はコロナ以前から長時間労働が問題となってきた。コロナ禍が過重労働に拍車を掛けている。
 学校でのコロナ対策は予算を確保し一部業務委託や効率化を早急に図るべきだ。スクールカウンセラーやスクールサポートスタッフの配置を手厚くできないかも検討に値するだろう。同時に廃止や合理化できる業務はないか、勤務内容を抜本的に見直し、教員の負担軽減を図る必要がある。
 教員たちの負担を軽減しなければ、精神的に落ち込む子どもたちのケアに向き合う時間を確保できない。軽減は、ひいては子どもたちへのケアにつながる。
 子どもたちが学ぶ環境も見直す必要がある。政府は児童生徒に1人1台のパソコン・タブレットを配布するGIGAスクール構想を前倒しで進めたものの、現場は活用できる状況に至っていない。オンラインの学習環境は、自治体や学校でばらつきがある。通信環境の有無によって学習格差を生んではいけない。
 教育の機会均等の観点からも行政は現場に届く支援に本腰を入れるべきだ。その際、教員側の新たな負担にも目配りが必要だ。コロナ禍で教員も子どもたちも悲鳴を上げている。政府や自治体、学校は、その現場の声一つ一つに耳を傾け、迅速かつ根本的な対応につなげることが肝要だ。