<社説>広がる人種差別抗議 共生社会へ意思を示そう

 出自で人に優劣を付けることは許されない。そんな当然なことが揺らいでいる。

 米中西部ウィスコンシン州で警官が黒人男性に背後から7回発砲した事件への抗議が広がっている。男性は下半身まひに陥った。米国では5月に警官による黒人男性暴行死事件が起きたばかりだ。
 黒人差別への怒りで米プロスポーツの試合ボイコットが相次ぎ、テニスの大坂なおみ選手が一時、大会を棄権する意思を示すなど反発が高まっている。日本にも波及し、抗議の声が上がっている。
 日本にとっても決して対岸の火事ではない。日本でも中国や韓国の国籍や出自を有する人々や外国人労働者、アイヌの人々への差別的言動が後を絶たない。多様な人々と共生する社会の実現に向け、日本でも差別に抗議する声を、もっと上げていくべきだ。
 米国で抗議が広がった背景には、人種差別を容認するようなトランプ大統領の言動や対応がある。発砲事件から3日後、ツイッターで「略奪や無法化を見過ごさない。法と秩序を回復する!」と書き込み、派兵を表明した。これまで同様、デモを力で押さえ付ける姿勢を貫く構えだ。
 8月28日に首都ワシントンに数千人の人々が集まり、トランプ政権に抗議の声を上げた。米公民権運動の黒人指導者である故マーチン・ルーサー・キング牧師が多様な人々の共生を目指し「私には夢がある」と演説したワシントン大行進から57年の日だ。
 参加者らはキング牧師が演説したリンカーン記念堂を舞台に、差別根絶を改めて呼び掛けた。抗議は全米に広がり、デモや集会の参加者とトランプ大統領支持者が衝突、米大統領選の選挙運動の高まりも相まって、米国では分断が深まっている。
 ただ人種差別問題を米大統領選の争点や米国内の分断の問題だけに矮小化してはいけない。世界ではトランプ氏のように自国中心主義を掲げ、出自で人々を排外する言動や暴力が流布している。こうした動きは、人類が長年、多大な犠牲を払って築き上げてきた自由や平等、共生といった普遍的価値への危険な挑戦だ。
 そう位置付けて身近な差別に目を向け、差別を根絶するために声を上げて行動することが今、求められている。
 沖縄も差別の標的にされてきた。名護市辺野古の新基地建設に反対する人々へのヘイトは後を絶たない。7月の東京都知事選では候補者の1人が中国大使館前で中国の蔑称「支那」を連呼し、玉城デニー知事を「支那の工作員」と発言した。本来、日本でも抗議運動が高まってもおかしくない状況だ。
 世界は今、新型コロナウイルスという目に見えない強大な敵と対峙(たいじ)している。感染予防や治療、経済の立て直しなどを含めて団結して対応すべき時だ。そんな大事な局面で差別による分断を持ち込む発言や行動は一層たちが悪い。



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