<社説>新「立憲民主党」 国民本位の政策を示せ


社会
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 立憲民主、国民民主の両党などが結成する合流新党の代表に枝野幸男氏が選出された。新党は「立憲民主党」に決定した。衆参両院を合わせて149人の最大野党となる。

 「安倍1強」といわれる政治状況が続き、行き過ぎた官邸主導を危ぶむ国民は多いはずである。単なる合従連衡ではなく、国民の声に耳を傾け国民本位の政策を確立することができるのか。代表としての手腕が問われる。
 代表選で枝野氏は、新型コロナウイルス禍で社会のひずみが露呈したとして新自由主義からの転換と「支え合う社会」の構築を訴えた。代表選後に「国民生活の現場」を大切にし「国民と共に闘う」姿勢を示した。
 安倍政権は、特定秘密保護法の制定や集団的自衛権の限定的行使を認めた閣議決定、安全保障法制など、多くの国民の反対や慎重審議を求める声を無視し、数で押し切る政治手法が際立った。
 安倍晋三首相の後継を決める自民党総裁選を巡り、5派閥が雪崩を打って菅義偉官房長官支持を決めた。安倍1強に代わって派閥政治が復活するのであれば、立憲政治は危機に瀕する。最大野党として政策論争を通じて国会を機能させなければならない。
 安倍政権の経済政策「アベノミクス」によって日銀が金融を緩和し株価を押し上げた。しかし、大企業や個人投資家は消費ではなく、内部留保や貯金に回していると批判されている。個人消費はこの20年でほぼ横ばいだ。地方経済にとってアベノミクスは何ら影響がないとの意見もある。
 アベノミクスの「最大の成果」は雇用改善とされる。しかし増加したのはパートなどの非正規労働者である。コロナ禍によって解雇や雇い止めが全国で5万人に上っている。
 自民党総裁選を争う石破茂元幹事長、菅官房長官、岸田文雄政調会長の3氏はアベノミクスをおおむね評価している。立憲民主党は格差是正にどう取り組むのか。アベノミクスに代わる経済政策を示さなければならない。
 沖縄にとって最大の懸案である名護市辺野古への新基地建設問題に、立憲民主党はどう向き合うのか。
 安倍政権は国政選挙、知事選挙、県民投票によって繰り返し示された新基地反対の民意を無視し、基地建設を強行してきた。
 民主党政権時代、鳩山由紀夫元首相が「最低でも県外」移設を掲げたが結局、県外移設は実現できなかった。
 日本記者クラブ主催の公開討論会で枝野氏は、米海兵隊が西太平洋地域で巡回することに意味があると説明した上で「米海兵隊の新基地を造らず、同時に普天間の危険を除去することは十分に可能だ」と述べ、対米交渉をして辺野古新基地を見直す方針を示した。民意に耳を傾ける政治を実現できるかどうか。県民は立憲民主党の動向を厳しく見ている。