<社説>Go To東京追加 感染拡大の懸念拭えない

 政府は、観光支援事業「Go To トラベル」の対象に東京都を追加する方針を決めた。最終決定すれば10月1日から東京が目的地の旅行と、都在住者による旅行の費用が政府補助による割引の対象になる。東京から地方へと人の移動が促される。

 ウイルスは人の移動とともに感染を広げるため、旅行の促進は当然、感染拡大のリスクを伴う。東京も沖縄も感染者数や医療現場の逼迫(ひっぱく)が十分に落ち着いていない現状で、事業拡大の判断は早計に映る。感染再拡大を招かないのか、懸念が拭えない。
 東京都は10日に、新規感染者数が減少傾向にあるとして警戒レベルを1段階引き下げ、飲食店などへの時短営業要請を解除する方針を決めた。それでも11日の新規感染者数は187人に上るなど、先行きは予断を許さない。
 8月1日に県独自の緊急事態宣言が発令された沖縄では、米軍基地内のクラスター(感染者集団)と合わせ、7月の4連休の「移入例」が感染者急増の発端になったという見方がある。
 県独自の緊急事態宣言は今月5日で終了したものの、人口10万人当たりの直近1週間の新規感染者数は東京に次いで全国2番目に多い。県の警戒レベルは依然として全4段階のうちの第3段階(感染流行期)にある。人の移動をはじめ警戒が緩めば、すぐに感染がぶり返す恐れがある。
 特に病床や医療従事者、機器に限りがある離島県の沖縄は、感染再拡大時の社会の脆弱(ぜいじゃく)さが顕著となっている。
 新型コロナの長期化で景気が悪化しており、経済活動の立て直しは重要だ。だが、実効性のある感染防止や水際対策が十分でないままに観光受け入れが進めば、感染者数が増えるたびに医療態勢が追いつかず、再び緊急事態宣言を出して社会経済活動を制約することを繰り返してしまう。その方がかえって経済のダメージを長引かせるだろう。
 県は「旅行者専用相談センター沖縄(TACO)」を那覇や宮古、石垣など県内5空港に設置し、空港利用者の発熱状況を確認する水際対策をとっている。しかし、発熱者に対し、感染の有無を調べる検査を空港内で実施できるのは現状で那覇空港だけだ。
 その那覇空港でも発熱者に検査協力を断られる事例がある。検査を受ける発熱者の待機場所がないといった設備、人員の各面でも改善が急がれる課題を抱えている。
 無症状者は空港の発熱検査をすり抜けるため、空港外の対策も重要だ。医療体制の強化や宿泊療養施設の確保、観光客が利用する宿泊・観光施設での感染対策の徹底、クラスターが起きやすい歓楽街対策などが求められる。
 県全体で水際対策や検査体制が徹底されていることを証明し、県民も観光客も沖縄の安全・安心を実感できることが、Go To事業の拡大を受け入れるための大前提だ。



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