<社説>コロナ交付金 市町村の自由度高めよ


社会
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 新型コロナウイルスの感染拡大防止や緊急経済対策として、国から地方自治体に配分される地方創生臨時交付金の使い道に市町村が知恵を絞っている。中小企業や生活困窮世帯などへの助成金といった事例が主だが、独自の取り組みをする市町村も出てきた。

 困窮する人たちへ、いかに早く適切な支援が届けられるか。市町村のきめ細やかな取り組みが進められるよう臨時交付金の増額や、より自由度が高く使い勝手をよくする必要がある。
 コロナ禍は雇用や地域経済に大きな打撃を与えている。沖縄のように経済基盤がぜい弱で非正規雇用が多く、ひとり親世帯の割合も高い社会では景気の悪化が即、生活苦につながってしまう。接触が制限される中で悩みを抱える人が孤立感を深め、問題が見えにくくなっている面もある。
 地方創生臨時交付金は総額3兆円を国が自治体に配分するもので、人口や感染状況などを基に配分額が算定される。沖縄県は約218億円が市町村に配分される。使途は感染拡大防止策や雇用維持、事業継続などの目的に合うことが条件だが、比較的自由度が高い。地域の自立性や共助が求められ、感染対策やデジタル技術の活用も必要だ。事業費の全額を国が補助し、自治体の負担はない。
 県内市町村でも取り組みは始まっている。16市町村で「プレミアム付き商品券」が販売または発売予定だ。市町村内の加盟店で使うことで地域内でお金を循環させられる。ユニークな施策としては、宜野湾市が高齢者向けデイサービスのオンライン開催など市民が提案した事業に助成する。うるま市はタクシーによる買い物代行、与那原町は密を避けた移動手段として自転車の活用を促す。
 県外でも静岡県袋井市が地元に帰れない出身者などに地元農産物を届けるふるさと農産物応援便が完売した。北海道旭川市は妊産婦に飲食店で使えるチケットを配布した。地域経済や住民生活を支えるアイデアを出している。
 地域の事情に即した事業を形にするには市町村にもっと権限を委譲し、財政支援額を増やすべきだ。全国知事会が8月に行った調査で、全ての都道府県が臨時交付金の不足を見込んでいると回答している。不足額は計約5千億円に上った。
 地域創生臨時交付金は国庫補助の仕組みで、自治体が各省庁に申請して交付されるため、締め切りから交付まで1カ月半から2カ月以上かかる。コロナ禍で一刻も早い支援が求められている中では、地方交付税交付金のように自治体が国に申請せずとも使途を自由に決められる仕組みにすべきだ。
 地域のニーズを最も把握できるのは市町村だ。住民の声を吸い上げ、困窮者を支援し、雇用と地域経済を守る。使途が適切か、住民や議会にはチェック機能も求められる。