<社説>菅政権下の沖縄予算 依存から自立型に転換を


社会
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 沖縄担当相の河野太郎氏は就任会見で、沖縄関係予算について「これだけの振興予算を使って結果どうなのか。今までのやり方でいいのか、別のやり方があるのか。一度きちんと見ていく必要がある」と述べた。

 沖縄関係予算は他県と比べて基地負担の見返りとして特別に上乗せされているという誤解が根強い。河野氏の「これだけの振興予算を使って」発言の真意を測りかねる。
 基地とのリンクは論外として、菅政権は沖縄関係予算を、高率補助によって国の財政に依存する構造から、県の裁量を大幅に認め自立を促すやり方に改めるべきだ。
 河野氏は「これだけの振興予算」と言うが、国庫支出金の1人当たりの額を都道府県別にみると、2017年度は沖縄県が全国3位。1人当たりの地方交付税は全国20位の水準のため、国から交付される依存財源全体でみれば全国11位にとどまる。
 それどころか15年度の県内の国税徴収額は初めて3500億円を超え、内閣府の沖縄関係予算額(補正後)を上回った。18年度は3938億円で同沖縄予算額を928億円も上回った。国から予算で優遇されているのではなく、逆に「これだけ(多額)の国税」を納めているのである。
 「振興予算」の中身も問題だ。交付対象を国が決め、使途を限定するような予算が増え、国の裁量が年々大きくなっている。20年度の沖縄関係予算は3010億円。3年連続で据え置かれ、県の使途の自由度が高い一括交付金は、6年連続減少している。かつて沖縄関係予算の半分を占めたが、20年度予算は3分の1に近い1014億円にまで減っている。
 一方、国が県を通さず市町村などへ直接交付する沖縄振興特定事業推進費は、19年度当初予算比25億円増の55億円を計上した。
 政府は「基地と振興のリンク」を否定するが、一括交付金の減額と、国による市町村への直接交付は、名護市辺野古の新基地建設を巡る国と県の対立が背景にあるとみられている。
 さらに就任会見で河野氏は、沖縄振興と米軍基地の受け入れを関連付ける「リンク論」について「基地問題があるので、それを無視して沖縄振興を語るわけにはいかんと思う」と語り「私は『ひっくるめ論』と言いたい」と煙に巻いた。
 かつて宝珠山昇防衛施設庁長官が県民に対し「基地との共生、共存」(1994年)を求め「官僚の傲慢(ごうまん)な発言」と受け止められた。民主党政権下の2010年には仙谷由人官房長官が辺野古新基地建設を「甘受していただきたい」と述べ、反発を招いた。
 「ひっくるめ論」と「リンク論」の違いは何か、河野氏は県民に説明してもらいたい。県民を丸め込め「共生、共存」や「甘受」につながる発想なら到底受け入れられない。