<社説>女性閣僚わずか2人 政治分野の本気度示せ


社会
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 掛け声倒れに終わった政策も「継承」するのだろうか。菅義偉内閣の閣僚20人のうち、女性は2人にとどまった。10%だ。

 安倍前政権は「女性が輝く社会」をうたい、女性活躍を成長戦略の柱に位置付けてきた。数値目標は「2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%」にすることだった。しかし政府は03年に掲げたその目標をことし断念した。「できるだけ早期に(達成する)」という表記に変更するという。
 看板政策でつまずいた前政権を引き継いだ菅政権である。なぜ目標達成に至らなかったか要因を分析し、政治の分野だけでも政策を達成するよう尽力すべきではなかったか。「女性活躍」の本気度は全く感じられない。
 世界水準からみて、日本では女性の地位はまだまだ低い。企業や公務員の管理職は19年時点で14.8%にとどまる。米国やスウェーデンの40%超、英国やノルウェー、フランスの30%超と比べても差は大きい。
 スイスのシンクタンク「世界経済フォーラム」が昨年発表した女性の社会進出の指標「男女格差報告」では、日本は153カ国のうち過去最低の121位に沈んだ。先進7カ国でも76位のイタリアから大きく離された最下位で、後れを取っている。
 特に深刻なのは政治分野だ。前年の125位からさらに低下し144位とワースト10位に入った。衆院議員は9.9%、地方議員は14.3%と低迷している。報告は「女性の議員や閣僚が少なく、さらに女性首相が誕生していない」と指摘した。旗振り役のはずの政府の取り組み不足がランキングを引き下げている。
 18年には政党に男女の候補者数を均等にするように促し女性の政治参画を目指す「政治分野の男女共同参画推進法」が議員立法で成立したが、各種選挙での女性候補擁立ははかばかしくない。ことし6月の県議選では女性が7人当選し、全体の14.6%と過去最多タイとなったが、立候補者数をみると64人中、女性は8人で、全体の12.5%にとどまった。
 政策決定の場に女性の声が少ないことが多くの弊害を生んではいないだろうか。少子化対策や待機児童問題に早くから当事者である女性の声があれば、状況は変わったのではないか。
 新型コロナ対策では世界の女性リーダーたちの活躍が光った。一方、日本では準備もなく全国一斉の休校要請が出され、大混乱を引き起こした。子育て経験のある女性閣僚だとしたら、こんな唐突な決定をしただろうかと想像する。
 政府が年内にもまとめる新たな男女共同参画基本計画で、一定の数を女性に割り当てるクオータ制などポジティブ・アクション(積極的改善措置)にも言及した。クオータ制にも踏み込んだ実効性ある対策を進めるべきだ。