<社説>沖縄に電子戦部隊 軍拡の歯止めこそ急務だ

 防衛省・自衛隊が電磁波などを駆使して攻撃を防ぐ「電子戦」の専門部隊を、県内に配備する方向で検討していることが明らかになった。沖縄本島にある陸上自衛隊の既存施設へ数年内に部隊の拠点を設ける計画だ。南西諸島周辺で活発化する中国の動きなどが念頭にあるという。

 中国が南シナ海のほぼ全域の管轄権を主張し、南西諸島など東シナ海にまで脅威を及ぼす横暴ぶりは目に余る。しかし不測の事態が生じれば、その最たる犠牲者は周辺の国民である。国民そっちのけで軍拡競争をエスカレートさせてはならない。東、南シナ海を舞台にした米国との抜き差しならない覇権争いに歯止めをかける。そのためにこそ政治外交があることを為政者は厳に自覚すべきだ。
 宇宙やサイバーに並び、新たな軍事戦略の要とされるのが電子戦だ。電子情報収集や電波のかく乱など攻撃、防護、支援の三つに分類される。
 攻撃の具体例で挙げられるのがロシア軍が2014年にウクライナ軍に仕掛けた電磁波攻撃だ。指揮統制を遮断して戦力発揮を妨害したという。
 電子戦のデータ収集は、敵の艦船や軍事施設が出すレーダーや通信の情報を上空で傍受し、集める役割を担う。国内では、05年に中国軍の電子戦データ収集機とみられる航空機が初確認された。九州南部や南西諸島西方の東シナ海の公海上空で2回にわたって活動した。以来、中国軍が日本周辺で電子戦機などを飛行させ、自衛隊や米軍の電子情報を収集しているとされる。
 こうした事態を受け、防衛省は21年度予算の概算要求で電子戦の専門部隊の設置も含めた経費を計上する方針を固めた。東京都にある陸上自衛隊朝霞駐屯地に部隊を新設する。21年3月には電子戦を担う80人規模の専門部隊を熊本県の健軍駐屯地に発足させる。
 沖縄への配備は、この動きと連動している。自衛隊の新たな部隊編成の「南西シフト」の一環に位置付けられる。
 防衛省の概算要求は、電子戦の経費も含め5兆4千億円を超える。過去最大だ。経済開発協力機構(OECD)によれば日本政府の公的債務残高は19年に国内総生産(GDP)比で225.3%、コロナ禍の推移によっては21年に256.9%になる恐れを指摘する。経済規模に対し2倍の債務を負う政府が歯止めのない軍拡を進めている。
 中国軍は8月26日に南シナ海に向けて弾道ミサイルを発射した。これを受けエスパー米国防長官は米紙への寄稿で、こう訴えた。「米国だけでは負担を背負いきれない。真のパートナーとして共通の利益を守るため、対中政策での共同歩調を考えてほしい」
 電子戦を担う部隊が配備されれば、周辺地域との無用な摩擦や緊張の高まりは避けられない。日本が取るべき立場は米中の覇権争いに加担することではない。専守防衛の原則に立ち返ることだ。



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