<社説>DV相談増加 被害見逃さず対策強化を


社会
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 新型コロナウイルス感染拡大により県内でも家庭内でのドメスティックバイオレンス(DV)や児童虐待の相談が増加している。ことし3~8月に県配偶者暴力相談支援センターなどに寄せられたDVの相談件数が1123件に上り、前年同期の約1・2倍となった。児童相談所の児童虐待の相談対応件数も2月以降、増加傾向にある。

 3月以降はコロナの感染拡大に伴う外出自粛要請や全国一斉の休校措置が続いた。外出できないストレスや経済的な不安などが引き金となり、家庭内で女性や子ども、高齢の親へ暴力が向けられる。
 人との接触が少なくなるため、密室の被害が見えにくい。政府はコロナが女性に与えた影響について研究会を設置する方針だが、早急に相談窓口の強化や保護施設の拡充などで救済の手を差しのべるべきだ。
 世界的にもコロナ禍で女性や子どもに向けられる暴力が深刻化している。国連のグテレス事務総長は声明で「多くの女性や少女たちにとって、最も安全であるべき場所に最大の脅威が迫っている。自宅の中でだ」と述べ、コロナ対策の一環に「女性の保護」を盛り込むよう世界各国の政府に強く求めた。
 日本でも5~6月にDVの相談窓口に寄せられた相談は前年同期の1・6倍となり、被害者の支援団体には「夫が在宅ワークになり、子どもも休校となったため、ストレスがたまり、夫が家族に身体的な暴力を振るうようになった」「自営業の夫が仕事がなくずっと在宅し、家族を監視したりするようになったので避難が難しく、絶望している」といった相談が寄せられているという。
 外出自粛や休校で被害者の訴えや身体の傷などSOSサインを地域の人や学校が見つけることが困難になった。支援団体や児童相談所の職員なども対面での相談や面会、交流が難しくなり、ますます被害が見えなくなる。実際、女性相談所での一時保護件数は減った。県の担当者は「感染への懸念や、夫や子どもが家にいるなどの理由で避難できない女性がいる可能性もある」とみている。
 政府のコロナ対策では当初、DV被害者への視点は抜け落ちていた。緊急経済対策で発表した一人10万円の特別定額給付金は受給者が世帯主とされたため、世帯主の夫から逃げているDV被害者は受け取れなかった。後に改善されたが、女性団体からは個人給付を求める要望が出されていた。
 同センターなど県の相談窓口は電話での受け付けを主に広報しているが、加害者が家にいる場合は電話はしにくい。会員制交流サイト(SNS)など多くの手段で被害者の声をいち早くすくい上げてほしい。地域も身近なところに被害が生じてはいないか、かすかな兆候を支援につなげるよう心掛けたい。