<社説>教員による性暴力 完全な免許失効が道理だ


社会
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 性暴力が原因で処分された学校教員は2018年度に過去最多の282人に上った。わいせつや性的言動なども含め被害者の49%に当たる138人が勤務学校の児童生徒や卒業生たちという。

 こうした教員が再び教壇に立つことがないよう保護者らでつくる市民団体が文部科学省へ教員免許法の改正を求める陳情書などを提出した。現行法は3年を過ぎると免許を再取得できるためだ。わいせつ事件で逮捕された教員が別地域で採用され、子どもに加害をした例も踏まえている。
 本来、信頼関係の下にある教員が優越的地位を悪用して一方的に子どもの人権を侵害するなどもってのほかだ。教員免許を失効させるのは当然だ。確かに憲法で職業選択の自由は保障されている。それでも教員を志望するならすべてを白紙に戻し大学教育を一からやり直すなどペナルティーを科すのは最低限必要だ。
 教員から性被害を受けた児童生徒は県内でも明らかになっている。勤務先の教え子にわいせつ行為に及んだ教員。果ては職員のわいせつ行為を知りながら勤務させた校長が処分されたケースもある。
 未成年と知りながら、みだらな行為に及んだ教員は動画に撮影してインターネット上に配信していたという。
 研究機関の調べで、教員のわいせつ行為の発生率は、一般に比べて平均1・4倍高いという推計がある。専門家は「先生と子どもで圧倒的な力の差があり、性暴力のリスクを常にはらむ」と指摘する。
 教員の行為により子どもが受ける人権上の被害が著しく回復困難こともある。想像も及ばないとすれば、人権意識がまひしているとしか見えない。成長過程にある児童生徒を鑑みれば、学校現場でこそ人権教育を徹底したい。
 文科省は、3年経過後に再取得が可能な教員免許法を改正し、制限期間を5年に延長する規制強化案を検討する。なぜ5年なのか。疑問は尽きないが、不十分な対応と言わざるを得ない。
 また、わいせつ行為をした教員が事実を隠して学校に採用されるのを防ぐため、原則として懲戒免職とする規定を整備するという。懲戒免職となれば、教員免許が失効し、官報に名前や生年月日が掲載される仕組みを活用する。
 失効歴をまとめたシステムを各教委などに提供するという。しかしこの仕組みも免許の名前を改名するなどして再び教員となった過去の事例があり、有効なのかは疑問だ。
 性暴力という人の道にもとる行為である。5年後とはいえ、教職課程の単位も有効で、講習など一定手続きで免許が再授与されるとすれば、到底理解は得られない。
 教員免許は完全失効とし、大学教育をすべて履修し直す。さらに加害者更正プログラムなどの必須化や、保護司のような制度の活用により、一定期間を観察下に置くなど、厳格な手続きが必要だ。