<社説>玉城知事就任2年 民意に応える道筋示せ


社会
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 玉城デニー知事の就任から2年がたった。任期4年の折り返し点だ。新型コロナウイルス対策や経済の再建、米軍基地や子どもの貧困の問題など県政の課題は山積している。

 翁長雄志前知事の急逝による知事選で玉城氏は翁長県政の継承を掲げ、過去最多となる39万余の票を得て当選した。
 名護市辺野古への新基地建設に反対する「オール沖縄」勢力は知事選など県内の主な選挙で勝ち、建設反対の民意を何度も示してきた。極め付きは2019年2月の県民投票だ。辺野古埋め立ての賛否というワンイシュー(一つの争点)で投票者の約7割が反対に投じた。玉城知事は建設阻止への明確な道筋を示し、この民意に応えるべきだ。
 政府は県民の民意を無視し、建設工事を強行している。それは民主主義の否定のみならず、国際法が保障する自己決定権の侵害でもある。国際人権規約は自己決定権を第1条に位置付ける。保障すべき人権の一丁目一番地だ。人々の自己決定権が侵害されると、その集団を構成する個人の人権も侵される可能性が極めて高いと考えられるからだ。
 沖縄に当てはめると、辺野古新基地断念など抜本的な基地負担軽減を求める自己決定権が認められないため、米軍絡みの事件・事故が相次ぎ、個人の人権が侵され続けると捉えられる。翁長前知事は15年、国連人権理事会の総会で演説し「沖縄の人々の自己決定権がないがしろにされている」と訴えた。
 玉城知事も全国だけでなく国際社会に対しても、もっと人権問題の観点から沖縄の基地問題を発信すべきだ。その観点や発信力が弱い。
 歴史観にも課題がある。6月23日の沖縄全戦没者追悼式について県はコロナ禍を理由に規模を縮小し、国立沖縄戦没者墓苑での開催を発表した。これに対し住民の犠牲を天皇や国家のための「殉国死」として追認することにつながるとの批判を沖縄戦研究者から受け、従来通り平和祈念公園の広場に変更した。
 首里城下にある第32軍司令部壕の保存・公開を巡っても、県はIT技術を用いた公開から検討委員会を設置する方針に転換した。保存・公開を求める世論に動かされた。
 翁長前知事は「イデオロギーよりもアイデンティティー」を唱えていた。沖縄のアイデンティティーにとって沖縄戦の歴史認識は非常に重要な要素である。ぶれない歴史観を持ってほしい。
 玉城知事が掲げる「誰一人取り残すことのない沖縄らしい優しい社会」の実現は、コロナ禍で重要性を増している。子どもの貧困問題を含め対応が試される。だが来年度の沖縄予算の概算要求額はコロナ対策予算を含めて県の希望額より減額された。玉城知事はそれを容認する考えを示したが、政府と強く交渉すべきだ。県民の苦境に思いをはせ、もっと緊張感を持って主体性を発揮してほしい。