<社説>休廃業最多ペース 将来に希望つなぐ支援を


社会
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 東京商工リサーチ沖縄支店の調べで、1~8月に県内で休廃業・解散した企業が前年同期より3割増の300件に上っていることが分かった。このままのペースで推移すれば、調査を開始して以降で最多だった2018年の375件を上回り、初めて年間400件を超える恐れがある。

 地域経済を支える中小企業や小規模事業者の廃業が進めば、雇用や取引先企業にも連鎖的に影響を広げてしまう。新型コロナウイルス感染症の影響で企業の経営が悪化する中で、事業継続に希望が持てるよう、雇用や事業承継のサポートなどきめ細かい支援が求められる。
 休廃業・解散は、多額の負債を抱えて経営が行き詰まる「倒産」には含まれない。1~8月の県内の倒産件数は20件にとどまり、前年同期比37・5%減となっている。企業の資金繰り破綻を回避することに重点を置いた行政や金融機関による支援が、現在のところ倒産の抑制に効果を上げているとみられている。
 だが、大手を中心に倒産が落ち着いている半面で、支払いなどに窮する前に店を畳んでしまう事例の広がりが休廃業の件数に表れている。
 事業の継続を断念する要因の一つに、売り上げや営業形態がコロナ前に戻ることはないという先行きへの悲観的な見方がある。現状の資金繰りの支援だけでは、経営の将来不安を払拭(ふっしょく)できない。
 小規模事業者が二の足を踏んでしまうデジタル対応などに、行政や各種団体が寄り添って支援する必要がある。
 コロナ禍の前から日本経済全体の課題となっている、経営者の高齢化と後継者不在という問題もある。コロナ禍の急速な経営悪化が事業を続ける意欲を失わせ、後継者不在による廃業のペースを早めてしまうことが懸念される。
 中小企業庁は、今後10年で70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は国内で約245万人となり、うち約半数が後継者が未定という試算を示している。このままでは後継者不在による廃業で、2025年までの累計で約650万人の雇用、約22兆円の国内総生産(GDP)が失われると警鐘を鳴らしていた。
 東京商工リサーチ沖縄支店が19年に県内中小企業に聞いたところ、60・6%の企業で後継者が決まっていなかった。後継者不在率は全国平均の55・6%を上回って全国で5番目の高さだ。
 長年にわたって続いている店舗や企業は、固定客がいて「稼ぐ力」を持っている。それにもかかわらず経営者の高齢化とともに廃業していくことが増えると、地域経済や雇用に大きな損失が生じる。一方で、収益性やブランド力のある老舗店舗を引き継ぐ形で創業したいという、若い経営人材もいるはずだ。
 承継を希望する第三者とのマッチングや創業促進の支援は、企業継続の断念を食い止める有効策になる。