<社説>過疎新法で適用外も 地域に即し柔軟に指定を


社会
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 過疎地域自立促進特別措置法(過疎法)の期限切れに伴い2022年度から始まる過疎新法で、現在過疎地域に指定されている県内18市町村のうち半数以上が指定から外れる見通しであることが、県の試算で判明した。同法は人口減少で過疎化が進む市町村に国が財政支援するもので、指定が外れれば、住民サービスの低下を招く恐れがある。

 県内で指定されている自治体の多くは財政力が乏しい離島の市町村だ。他の自治体と陸続きではないので医療などのサービスを一定程度、自己完結しなければならない。沖縄は米国施政下に置かれていたため全国で唯一、過疎法適用が10年遅れた経緯もある。
 新法では、こうした地域の特殊事情に即して過疎地域を柔軟に指定すべきだ。指定要件の基準をしゃくし定規に適用することで住民サービスの低下を招き、それが人口減に拍車を掛ければ元も子もない。「地域の自立促進」という法の趣旨にも反する。
 指定要件は、主に人口減少率や財政力指数だ。指定されている県内市町村は財政力が弱い自治体で、全て財政力の基準に達せず指定要件を満たしている。しかし人口減少率に関しては、県全体の人口が増えている中、過疎地域でも減少率に改善が見える。主にそうした地域が指定から外れる見通しとなっている。
 新法を審議している与党・自民党は指定要件の一つである人口減少の起点を、現在の1960年から、75年か80年を軸に変更することを検討している。変更した場合、本紙の取材では少なくとも5町村が外れる見通しを持っている。
 指定から外れた場合の影響は大きい。過疎法は指定地域に対し、元利償還の70%を交付税措置する過疎債の発行を認めたり、公共事業の補助率をかさ上げしたりしている。
 県内指定地域では、農林水産業や診療所の運営など、各事業全般を網羅する形で適用されている。義務教育施設や上下水道施設の整備など国の補助事業の裏負担を賄うのが厳しい自治体は過疎債を活用している。
 中でも過疎債で実施しているソフト事業は、他の制度でも起債できる箱物などのハード事業と異なり、代替が効かないという。
 診療所や歯科診療所の運営委託費に過疎債を充てている自治体の担当者は「仮に指定が外れても診療所をなくすわけにはいかない。他の住民サービスを絞ることになるだろう」と話す。当該自治体の危機感は強い。
 自民党は来年の通常国会に新法の法案を提案する予定で、年内には法案の骨格を固める方針だ。これに先立ち当該市町村だけでなく、県や県関係国会議員も一丸となって過疎地の住民サービスを守れる施策を政府に求めていく必要がある。島の暮らしが豊かでこそ、沖縄の多彩な特長を発揮し、全県の発展につなげることができる。