<社説>新聞週間始まる 使命自覚し権力を監視


社会
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 きょうから新聞週間が始まった。今年は「危機のとき 確かな情報 頼れる新聞」が代表標語だ。コロナ禍の中で冷静、的確、そして迅速な報道が求められる。

 戦後75年を迎えた今年の新聞週間は、戦争動員のために新聞が国民を欺いた過去を痛切に反省し、報道の使命と責任を自覚する機会としたい。私たちは菅政権下で国民に代わって立法、行政、司法をチェックする役割を果たさなければならない。
 アジア・太平洋戦争の最中、国家による言論統制によって地方紙が1紙に統合された。沖縄は1940年「沖縄新報」が創刊された。この新聞は、国家の戦争遂行に協力し、県民の戦意を高揚させる役割を担った。
 あれから80年。7年8カ月に及んだ安倍政権は、報道の自由を制限する法律を次々と成立させた。特定秘密保護法や「共謀罪」法、小型無人機(ドローン)規制法などだ。国家の恣意的な運用によって取材の自由が骨抜きにされかねない。特定秘密保護法は秘密指定の基準が曖昧で市民がそれと知らずに「特定秘密」に接近し、処罰されることもあり得る。報道機関も同様だ。萎縮効果を狙う手法は、かつての言論統制と酷似している。今、最も問われているのはジャーナリズムの在り方である。
 安倍政権下で沖縄の基地問題取材の制約は顕著だった。2016年8月、東村と国頭村に広がる米軍北部訓練場のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設に抗議する市民を取材中の本紙記者ら2人が機動隊によって拘束され取材を妨害された。
 今年9月に改正ドローン規制法が施行され、テロ防止などを理由に米軍基地やその周辺でドローンによる飛行が原則禁止された。政府が建設を強行している名護市の辺野古新基地建設現場の上空取材が困難になっている。
 沖縄にとどまらない。18年12月に首相官邸が当時の菅義偉官房長官の記者会見で東京新聞記者の質問を「事実誤認」と断定し、質問制限ともとれる要請文を官邸記者クラブ宛てに出した。この事態に「特定記者の排除を狙い、国民の知る権利を狭めるものだ」と批判の声が上がった。
 安倍政権下で知る権利も侵害された。森友学園問題や加計学園の獣医学部新設問題で、政治の私物化や官僚の忖度(そんたく)によって公文書の改ざん、隠匿、廃棄が表面化した。
 国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」が発表した2020年の世界各国の報道自由度ランキングで、調査対象の180カ国・地域のうち日本は66位(昨年67位)。「反愛国的」テーマを扱ったり政権を批判したりする記者がSNS上で攻撃を受けていると指摘している。
 安倍政権を引き継いだ菅政権下で公文書の改ざんや廃棄を許さず、伝えたいすべてのニュースを読者に届ける新聞でありたい。