<社説>菅政権発足1カ月 国会で説明責任果たせ

 菅義偉首相が就任して16日で1カ月を迎えた。就任2週間で日本学術会議が推薦した新会員候補6人を任命拒否することが明らかになった。安倍前政権からの「強権体質」が引き継がれている。

 「何も問題はない」と菅首相は強調するが、問題の核心と言える任命拒否の理由についていまだに明らかにしていない。野党の要求する臨時国会召集に耳を貸さず、国会は開かれていない。透明性に欠けた政権が続くことを危惧する。26日召集予定の臨時国会で国民に説明責任を果たしてもらいたい。
 菅首相は就任記者会見で、行政のデジタル化や携帯電話料金の引き下げの実現などに強い意欲を示した。しかし、学問の自由を侵害しかねない日本学術会議の新会員の任命拒否について、正面から向き合おうとしない。
 学術会議から提出された推薦者名簿を「見ていない」と開き直る。ではなぜ見てもいないのに「総合的、俯瞰(ふかん)的に判断」できたのか。まったく理解できない。
 首相の任命決裁前、杉田和博官房副長官が内閣府の提案に基づき、任命できない人が複数いると、首相に口頭で報告していたことが判明している。「官邸官僚」の官房副長官が関与したのなら、首相の任命権や日本学術会議法に基づく選考権に対する重大な侵害と言わざるを得ない。
 首相は「任命する責任は首相にある。推薦された方をそのまま任命する前例を踏襲していいのかを考えた」と述べ憲法が保障する「学問の自由」への侵害との指摘には「全く関係ない」として別問題だと強調している。「任命責任は首相にある」と言うのなら、一連の経緯を国民に説明する責任がある。
 これまでの菅政権の姿勢は前政権の東京高検検事長の定年延長問題を思い起こさせる。人事を通して政治からの独立を求められる検察に介入した。同様に「任命責任」を持ち出して学問の自由に介入した。二つの事例は同根である。
 さらに説明に窮すると論点をすり替える。学術会議から答申や勧告が出ていないと言い始めた。そもそも諮問されていないので答申できない。学術会議はその代わり提言を行っている。すると今度は、自民党が学術会議の在り方を検討するプロジェクトチームを発足させた。問題の核心である会員候補6人の任命拒否理由を明かさないまま「行政改革」として国費支出や組織形態を検証するのだという。
 学術会議問題を巡り、さまざまな学会や大学が抗議の声を上げている。「(戦前の)滝川事件が思い起こされる」という文言に危機感がにじむ。滝川事件は著書や講演内容が「共産主義的」とレッテルを貼って、文部省が京都帝大法学部の滝川幸辰教授を一方的に休職処分などにした学問弾圧事件だ。政治介入という政権の「暴走」を止めない限りこの国に未来はない。



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