<社説>GoTo事業迷走 地域経済に役立つ改善を


社会
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 GoToトラベルがトラブル続きだ。

 開始直前に東京都が対象から外されたり、国が決めた割引上限額が突然引き下げられたりした。全国に旅行客を振り分けるために予算を13地域に分けた措置を撤廃した。説明が足りないままに突然、改変が発表され、その度に利用者も宿泊事業者も混乱させられている。
 観光は宿泊、飲食、運輸など裾野の広い産業で、県経済の屋台骨を支えている。コロナ禍で苦境に立つ観光産業の支援は当然、必要であり、朝令暮改で事業者を疲弊させてはならない。大手予約サイトや旅行会社、高級ホテルに支援が偏りすぎているという批判もある。地域経済の下支えという目的からずれていないか。事業の効果が地場の事業者に行き届いているかどうか検証した上で制度の改善が必要だ。
 GoToトラベル事業は旅行代金の35%が割引に充てられる。約1兆3500億円が予算化され、うち外部への事務委託費1866億円を除く金額が支援に使われる。
 7月下旬に始まったが、直前に東京都を対象から外した際は県内ホテルでも予約のキャンセルが相次いだ。
 赤羽一嘉国交相が予算執行の遅れを理由に来年1月以降の延長があり得ると記者会見で発言した直後に、一部の大手旅行会社が、予算を使い切ったという理由で上限額を1万4千円から3500円に引き下げたり、利用回数を制限したりして利用者を混乱させ、ホテルなどには問い合わせが殺到した。国交省が予算枠を追加配分すると発表して収拾を図る事態になった。
 さらに国は全国13の地域ごとに設定した割引予算枠を事実上撤回した。本来は特定観光地に旅行者が集まっても、他地域への旅行割引に必要な原資がなくならないよう管理するための措置だった。今後は人気観光地で予算消化が進めば他地域へ回る予算が減り経済効果は偏ってしまう。
 コロナ禍の緊急策とはいえ、制度設計が甘く、対応は場当たり的だ。事業の目的は経営難に陥った観光事業者の救済だが、比較的高額なホテルや旅館に客が集中し、中小やビジネスホテル、民宿は依然として苦戦している。税金を使う以上、公平、公正に運営しなければならない。
 県内では新型コロナウイルスの感染者が9月後半以降、じわじわと増え、15日から3日連続30人超となった。観光客が戻りつつあるのは歓迎だが、人の集中により感染拡大につながらないか懸念される。
 政府の対策分科会は、コロナ感染防止のため旅行先や日程を分散させるよう提言した。企業や官公庁は休暇をずらして取得する取り組みを積極的に広げる必要がある。
 感染防止と観光の活性化を両立させるために、政府は支援策の効果と、感染拡大の影響を日々検証することが求められる。