<社説>米軍消防協約不適用 住民の安全第一に万策を

 米軍基地と隣り合わせの生活を強いられている住民にとって看過できない対応だ。

 4月に米軍普天間飛行場で泡消火剤が流出した事故で、宜野湾市消防本部と米軍消防が、災害時などに活動を相互に支援する消防相互援助協約を結んでいるにもかかわらず協約を適用せず、除去活動に必要な情報の共有や協力要請を行わなかったことが判明した。事前の情報共有や、事故を想定した訓練も実施されていなかった。
 これでは協約が形骸化していると言わざるを得ない。泡消火剤は発がん性などのリスクが指摘される有機フッ素化合物PFOSなどを含む。わずかフェンス一枚向こうの米軍基地には兵器や弾薬など危険物が多い。災害時の民間地への影響を考え、米軍と自治体は住民の安全を第一に、情報共有や訓練、災害時の迅速協力など万策を尽くすべきだ。
 協約は「双方の管轄する地域社会の火災及びその他の災害から生命、財産を保護」すると明記する。要請を受けた側が協力するほか、最新の消火薬剤や機器などの情報交換、訓練などを通して援助体制を確立するとうたっている。
 しかし市消防は、任務などを定める消防組織法第1条などを根拠に「関係法令で明確に定義されていない」などとして泡消火剤に関する活動は協約の適用外とした。これに識者は同法1条にある災害は全ての災害が入り、協約の「災害」も該当すると指摘する。
 米軍基地にある危険物は細部が一般に公開されないものばかりだ。そもそも、その除去作業などを一つ一つ明確に定義することなど不可能に近い。百歩譲って定義が必要だとしても、過去に何度も起きている泡消火剤の流出事故は、その後も起きる可能性を想定し、関係する活動を協約に含ませるべきではなかったか。
 ただ、本来は、あらゆるリスクを想定することが重要だ。その意味で災害は広義に捉えるべきである。
 2004年に沖縄国際大に墜落した米軍ヘリには放射性物質ストロンチウム90が搭載されていた。市消防隊員は事実を知らされないまま、消火活動に当たり、被ばくの危険にさらされた。この教訓は生かされていないのか。
 泡消火剤の事故発生当時、米軍は基地内の対策を優先し、基地外で泡消火剤を回収しなかった。宜野湾市消防は基地外で回収や放水に追われたが、多くは川の自然の流れに任せるしかなかった。協約が機能し事前の情報共有や訓練などを実施していたら、もっと迅速かつ効果的な対応ができた可能性は拭えない。
 大切なことは協約をどう生かすかだ。協約履行に向けた細部の計画すら策定されていない。これでは何のための協約か分からない。法の解釈を持ち出して適用外とする宜野湾市消防の姿勢は住民の理解を得られない。住民の命や健康、安全のためにあらゆる手だてを尽くすべきだ。



関連するニュース







  • お知らせ


  • 琉球新報デジタルサービス



  • 会員制サービス






  • 他のサービス