<社説>自民県議集団感染 危機管理の在り方見直せ


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 耳を疑う出来事だ。自民党県連所属の県議11人が新型コロナウイルスに集団感染した。18~21日に与那国、石垣、宮古島での視察に参加したメンバーだ。視察だけでなく夜に懇親会を開き、複数の議員は2次会にも参加したという。

 危機管理意識が余りにも低すぎる。陽性判明を受け、県議会決算特別委員会の審議に影響が出た。市長、副市長が濃厚接触者として自宅待機措置となった宮古島市をはじめ、地方行政にも影響を及ぼしている。視察に参加した議員は自らの行動を振り返り、猛省すると同時に危機管理の在り方を見直すべきだ。
 県議らが新型コロナウイルスに感染した経路はまだ分かっていない。新型コロナウイルスは誰もが感染する可能性がある。感染したこと自体は責められない。
 ただ宮古・八重山地域の感染は増加傾向にあり、県は14日に宮古島市の飲食店に対策を促す注意報・第3報を出した。16日付で両地域の病床確保に関する「医療フェーズ」を最高の5に上げている。
 こうした状況の中で、常任・特別委員会の委員長職を務める県議を含め、18人もの大人数で離島を訪問する必然性はあったのか。ましてや2次会に行くなどもってのほかだ。
 互いに本音を話す懇親会があってもいいだろう。ただし国や県の指針では少人数、短時間などの目安が示されている。20人を超える懇親会を3日連続で開くとは社会人としての常識すら疑われる。
 議員の視察はさまざまな課題を自身の目で確かめ、地元の関係者から民意をくみ取る重要な機会だ。今回視察した地域にはコロナ下での離島医療の構築や住民間で意見が分かれる自衛隊配備問題などの課題があり、意義は認める。
 しかし「場所に目的、人数、手段の全てが不要不急だったのかは問われるべき」(岸本邦弘宮古島市医師会副会長)との指摘がある。市中感染が疑われる地域への視察が妥当か自民県連は検証すべきだ。
 防災に対する危機管理として「プロアクティブの原則」というものがある。(1)疑わしいときは行動せよ(2)最悪の事態を想定せよ(3)空振りは許されるが見逃しは許されない―というものだ。防災に限らず最悪の事態を想定することは、危機管理上、鉄則といえる。
 県議会は27日にも会派代表者会議を開き、視察の在り方を検討するという。3原則を踏まえた実効性ある対策を打ち出すのは当然だ。
 県民の負託を受けた議員は、県とともに感染拡大防止の先頭に立って自らを律する義務がある。今回は集団感染によって決算特別委の審議が中途半端に終わるなど議員本来の役割も果たしていない。
 自粛を強いられる県民からは、自民県議団の振る舞いに「観光気分か」と厳しい目が向けられている。疑念を払拭(ふっしょく)するには県連自ら視察の経緯を検証するだけでなく、速やかに公表する責務がある。