<社説>バイデン氏勝利 融和と協調に全力尽くせ


社会
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 米大統領選は政権奪還を狙う民主党のバイデン前副大統領が共和党の現職トランプ大統領を破り当選を確実にした。

 トランプ政権の4年間で社会の分断が深まり、人種差別と格差が広がった。対外的には単独主義が際立った。コロナ禍の今、バイデン氏は対立ではなく社会の融和と国際協調路線の回帰へ向け全力を尽くしてほしい。
 共和党は、経済のグローバル化によって経済的に苦境に立たされる白人労働者などを中心に支持を獲得した。一方、民主党は女性や様々なマイノリティー(少数者)などが支持する。双方の分断は、今回の大統領選でも可視化され、今や米国は「二つの国」と言われるまでになっている。この根深い相互不信を解決することが、バイデン氏に求められる。
 外交政策は「自国第一」主義を進めたトランプ政権から、多国間主義に舵を切るだろうが、前政権の影が付きまとう。
 前政権は、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」から離脱した。中距離核戦力(INF)廃棄条約から離脱、コロナ禍のさなかに世界保健機関(WHO)脱退を通告した。
 これら外交政策の結果を一つ一つ解きほぐしていくことは簡単ではないだろう。特に国内総生産(GDP)世界第2位の中国が覇権主義的性格を強めていて、対中関係で緊張緩和が進むか見通せない。
 一方、バイデン政権誕生は沖縄にどのような影響を及ぼすのだろうか。
 バイデン政権になっても沖縄側が望む基地の整理・縮小は進まないという見方が有力だ。バイデン氏が所属する民主党政権を振り返ると、クリントン大統領は2000年の沖縄サミットで「沖縄におけるわれわれの足跡を減らす(reduce our footprint)ため、できるだけの努力をする」と約束した。しかし、その目玉だった普天間飛行場の返還は名護市辺野古の新基地建設へとすり替わり、米軍の「足跡」は減らない。
 オバマ大統領も、県民の強い反対にもかかわらず、新基地建設を断念しなかった。
 共和党のトランプ政権が進めた対中強硬路線は、民主党政権に交代後も基本的に踏襲されるとみられている。尖閣有事や台湾有事に沖縄が軍事拠点になる可能性がある。
 日本政府は米国との軍事一体化を進め、先島へ自衛隊を配備するなど南西諸島の防衛を強化している。沖縄の基地機能強化は、有事の際「敵国」から核ミサイルなどの標的にされることを意味する。
 こうした状況下で、玉城デニー知事が求めている日米両政府と県の3者による協議機関「SACWO(サコワ)」の設置は、重要な意味を帯びてくる。基地負担を強いられる沖縄は、日米の安全保障協議に当事者として加わるべきだ。玉城知事はあらゆるネットワークを駆使してバイデン新政権に求めてほしい。