<社説>社民、事実上分裂 沖縄に寄り添う政治を


社会
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 「護憲の老舗」が消滅の危機にある。社民党は14日の臨時党大会で、立憲民主党に合流する国会議員や地方組織の離脱を容認する議案を可決した。

 社民の国会議員4氏のうち、衆院沖縄2区選出の照屋寛徳氏をはじめ3氏は党から離れる見込みだ。福島瑞穂党首のみが残留を表明した。事実上の分裂といえる。
 党勢の低落が続く中で沖縄は衆院選挙区で社民が議席を確保する唯一の県だ。沖縄に寄り添い、この島に75年も押し付けてきた米軍基地問題を解決し、沖縄の自己決定権の実現を後押しする政治勢力の結集を望む。
 「護憲」を掲げる社民の政策は、旧社会党時代から非戦、人権などを重視した。戦後沖縄の歴史を振り返れば、日本国憲法への復帰を願った県民の声と重なる部分もあった。
 復帰後も度重なる基地問題への対応、さらには日米地位協定の改定要求など沖縄の民意を反映する政党であった。
 2010年の民主党との連立政権下では、普天間飛行場を名護市に移設する日米合意に反対し、当時内閣府特命担当大臣だった福島氏が罷免された。「普天間を県外、国外に」と掲げた民主党政権の方針転換に対し、連立を離脱してでも県民との約束を守ると意思を示したことは、政治不信への一定の歯止めになったと評価できるだろう。
 最近の選挙でも19年参院選で県内の比例政党別得票率は自民の25・9%に次ぎ2位の19・2%を獲得した。全国で得た比例106万票のうち、10万票が沖縄からだった。県議会でも県政与党最大会派の中核を担っている。
 社民の最大の地盤ともいえる沖縄県連が、政権交代に向けて合流やむなしと判断し、臨時党大会で賛成票を投じた意味は重い。
 辺野古をはじめ国政と直結する沖縄の課題を国会の場で議論するには、与野党問わず地元の民意を代弁する議員が必要とされる。合流を目指す立憲民主とともに、単なる選挙協力にとどまらず沖縄の声を中央に届ける努力が今以上に求められる。
 社民の衰退は1990年代以降の新党結成や政界再編の中、自衛隊合憲など政策のぶれが出たことに始まる。「現実への対応」が支持層、党内の離反を招いたといえる。
 臨時党大会で照屋氏が「先輩方が築いた遺産を食いつぶした」と福島氏を批判したのは、じり貧の中で展望を見いだせない不満の表出だろう。
 50年前の70年11月、戦前戦後を通じて沖縄選出議員として初めて国会の代表質問に立ったのは、旧社会党の上原康助氏だった。上原氏は、沖縄を日本から切り離し米国の軍事植民地のような状態に置くことを容認した日本政府の責任を追及した。沖縄は日本復帰後も基地の過重負担にあえいでいる。「沖縄に寄り添う」とは、この異常な状態を解決する政治にほかならない。