<社説>選手の性的撮影被害 厳罰化含め法整備急げ

 日本オリンピック委員会(JOC)や日本スポーツ協会など7団体が、アスリートの性的な撮影被害や画像拡散の問題で、被害撲滅に取り組む共同声明を発表した。

 今後、この問題を「性的ハラスメント」と位置付け、スポーツ界として対策に乗り出すという。長年続く根深い問題だけに、「盗撮罪」などの法整備も含めた実効性のある対策を求めたい。
 被害は8月、陸上の日本代表経験もある複数の現役女子選手からの訴えで表面化した。競技中にお尻や胸など体の一部分をアップにした写真を無断で撮られたり、会員制交流サイト(SNS)で卑劣な言葉が送られてきたり、加工した写真を性的な意図で流布されたりする被害が多発していた。
 スポーツと盗撮の問題は以前からあった。甲子園のアルプススタンドで応援する女子生徒の隠し撮りが問題になったこともある。SNSの普及により被害は悪質化している。2005年ごろ日本学生陸上競技連合は、体の一部をズームした画像や動画がネットに掲載され、DVDなどで売買される事例を重く受け止め、会場に「盗撮禁止」などの看板を設置した。フィギュアスケートや体操は会場での撮影を原則禁止にしている。
 しかし、撮影規制などの効果は限定的だ。被害は中高校生に広がる。10月には全国大会で未成年の選手を性的な意図で撮影していた不審者が通報されたが、厳重注意にとどまり帰された。最近は人工知能(AI)技術を使って合成した偽動画「ディープフェイク」が作られるなど常軌を逸している。
 国内は盗撮行為を刑法で規定しておらず、現状では都道府県ごとに迷惑防止条例などで取り締まるしかない。条例の対象は原則、衣服で隠されている下着や身体を撮影する行為とされ、選手のユニホーム姿の「盗撮」は犯罪に該当しない可能性が高い。
 共同通信のアンケートで、五輪競技を統括する41団体のうち14団体が被害を認識し、7団体は問題を把握した時期は10年以上前だと回答している。根本的な解決策を見い出せないまま被害は長く放置されてきた。
 JOCなどは情報窓口を設けて実態把握に努めるというが、被害に遭った場合の対処、例えばSNSで中傷された際に投稿を削除する手続きなど、選手個人では難しいケースにも対応してほしい。
 近年、性被害を告発する「#MeToo」や性暴力根絶を訴える「フラワーデモ」が活発になった。スポーツ界でも長年続いてきた被害に女性アスリートたちがノーの声を上げ始めた。
 アスリートの尊厳を守り、競技に専念させるためにも抜本的な解決策に向けスポーツ界だけでなく、行政機関も連携すべきだ。明確な性犯罪という位置付けで法整備に取り組んでほしい。



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