<社説>落下傘訓練常態化 政府は米国に中止求めよ

 地元自治体が中止を求める中、米軍は18日、うるま市津堅島沖で今年11回目のパラシュート降下訓練を強行し、過去最多を更新した。地域住民や漁業関係者に重大な被害を与える可能性がある危険な訓練が常態化している。政府は地元の声を踏まえ、訓練中止を米国に強く求めるべきだ。

 津堅島沖での降下訓練は、県が確認を始めた1997年から2016年までは年間0~1回にとどまっていた。ところが17年から昨年まで3年連続9回に達した。東シナ海や南シナ海における中国の軍事行動の活発化が訓練増加の背景にあると見られる。
 特に危険だったのは10月6日に実施された8回目の訓練である。通知された訓練時間を15分超過した午後4時15分ごろに物資を投下したのである。米軍が投下したトレーラーで読谷村の少女が亡くなった1965年の事故を思い出した県民もいたはずだ。住民の生命の安全を度外視した米軍の行動に憤りを覚える。
 うるま市議会は「度重なる訓練の実施は、いかなる理由があるにせよ到底容認できるものではない」「一歩間違えれば重大な事故につながる可能性があり、極めて危険である」と抗議し、訓練中止を求めた。地元の怒りは当然だ。
 津堅島沖での訓練以外にも7月9日、県や「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協)の中止要請を無視し、日米特別行動委員会(SACO)合意に反する嘉手納基地でのパラシュート降下訓練を強行した。伊江島では1月、提供区域外にパラシュートとプラスチック製の箱を落とす事故が起きている。
 モズクの養殖場や民間船の航路周辺、住宅密集地に囲まれた基地、伊江島のような小さな島で訓練をすること自体、無理があるのだ。米本国に訓練を移してはどうか。
 そもそも津堅島沖でのパラシュート降下訓練に関する日米間合意の存在は明らかになっていない。SACO合意を無視し、津堅島で訓練が常態化しているのは異常だ。沖縄はパラシュート訓練場ではない。車両や人員つり下げ訓練も含め、即刻中止すべきだ。
 日本政府は県や地元自治体、地域住民の不安や怒りの声を深刻に受け止め、訓練中止を明確に米側に求めなければならないはずだ。しかし、両国間でそのような交渉がなされたためしがあるのだろうか。日米合同委員会をはじめ、あらゆるレベルで訓練中止を議論してほしい。
 菅義偉首相は今月12日、米大統領選で勝利を確実にしたバイデン前副大統領との電話会談で日米同盟の強化に取り組む方針を確認した。しかし、沖縄を危険にさらす日米同盟を県民は望んでいない。
 菅政権は「悪(あ)しき前例主義の打破」を掲げている。米国追随の外交・安保政策こそ打破すべき前例ではないのか。危険な訓練の横行は主権の侵害である。そのことを菅首相は認識すべきだ。



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