<社説>「桜を見る会」疑惑 安倍氏は国会で説明せよ


社会
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 一国の首相が国民の税金を私物化して、国会で虚偽答弁を繰り返したのか。

 安倍晋三前首相側が主催した「桜を見る会」の前夜祭を巡り、会場だったホテル側が作成した明細書などがあり、安倍氏側が費用の一部を補填(ほてん)した内容が示されていることが明らかになった。
 安倍氏は国会などで「事務所や後援会の収入、支出は一切ない」と述べ、収支報告書の記載も不要と説明していた。
 菅義偉首相は25日の衆院予算委員会で安倍氏の国会招致を事実上拒否した。都合の悪い事実にふたをすることは許されない。安倍氏は国会で説明責任を果たす義務がある。
 夕食会は「安倍晋三後援会」が主催し、2013~19年に東京都内の二つのホテルで開かれた。会費は1人5千円で、19年は地元・山口の支援者ら約800人が参加した。
 19年までの5年間で支払総額は2千万円を超えたが、参加者の会費だけでは足りず、差額分の計約800万円を安倍氏側が負担したという。
 安倍氏周辺は東京地検特捜部の任意の事情聴取に、差額分を補填したことを認めている。不足分は安倍氏の資金管理団体「晋和会」から支出された疑いがある。
 しかし、晋和会の政治資金収支報告書に夕食会に関する記述はない。晋和会が補填したのなら政治資金収支報告書への不記載となり、政治資金規正法に違反する。さらに有権者への寄付を禁じる公職選挙法に抵触する恐れがある。
 安倍氏はこれまで、夕食会を含めた全費用は参加者の自己負担で、安倍事務所や後援会としての収入、支出はなかったと強調した。会費についても会場入り口で安倍事務所職員が集金しホテル側に届け、参加者にはホテル名義の領収書をその場で渡したと説明している。ホテルからの明細書発行を否定していた。
 今回ホテルから安倍氏側が補填したことを示す明細書が示されたことで、安倍氏が国会でうそをついたことなる。
 第2次安倍内閣で桜を見る会の招待者を首相や与党政治家が推薦する「政治枠」が増加した。安倍氏の地元後援会員が多数招かれ、参加者が約1万8千人にまで膨れ上がった。「私人」であると閣議決定した首相夫人が推薦した人物もいた。公費(税金)と政治の私物化である。預託商法で大勢の被害者を出したジャパンライフの元会長が首相推薦枠で招待された疑惑も浮上したが、未解明だ。
 政府は実態解明の鍵となる招待者名簿を廃棄したと説明した。公文書は国民の知的財産であり政府の所有物ではない。意図的に廃棄したのなら民主主義の根幹をないがしろにする行為だ。
 安倍氏だけでなく当時官房長官だった菅首相が実態を知らなかったとは考えにくい。安倍氏を証人喚問して国会で真相を明らかにすべきだ。同時に、特捜部は全容解明に全力を尽くしてもらいたい。