<社説>辺野古抗告訴訟却下 「法の番人」を放棄した

 民主主義の手続きをないがしろにし、地方自治を軽んじる国家の振る舞いに向き合わず、「法の番人」としての責任を放棄した。

 名護市辺野古の新基地建設を巡り、県の埋め立て承認撤回を国土交通相が取り消す裁決をしたのは違法として、県が裁決取り消しを求めた訴訟の判決で、那覇地裁は請求を退けた。
 実質審議をせず新基地建設を強行している国の姿勢を是認するもので、到底受け入れられない。行政をチェックすべき司法が時の権力に迎合したと見られても仕方ない。
 今回の抗告訴訟で、県は埋め立て承認撤回の理由について大きく四つの主張をした。
 第1に埋め立て承認後に多くの問題が発覚したことだ。防衛省は埋め立て予定海域で軟弱地盤が見つかったことを知りながら、その事実を隠していた。埋め立て区域の海底に活断層が存在することも分かった。
 第2に留意事項違反である。仲井真弘多知事(当時)が埋め立てを承認する条件として「工事の実施設計について事前に県と協議を行う」という留意事項があった。
 ところが、沖縄防衛局は護岸全体の実施設計を示さないまま一方的に事前協議を打ち切り、護岸工事に着手した。埋め立て承認時と異なる工事を実施しながら、計画変更手続きもしなかった。
 第3に環境保全が挙げられる。沖縄防衛局は事業実施前に実施すべきサンゴ類を移植しないまま護岸工事に着手した。最後に民意である。過去2回の知事選、今年実施された国政選挙で新基地反対の候補者が当選した。2月の県民投票は辺野古埋め立てに7割超が「反対」している。
 県の埋め立て承認撤回に対し、防衛省は同じ内閣の国土交通相に救済を申し立てた。本来、国民を救済する行政不服審査制度を使い、国家が「私人になりすまし」たと批判された。国家と国民が同じ救済を受けられるはずはなく、明らかに制度の乱用だろう。国交相は防衛省の言い分通りに、撤回の効力を取り消す裁決を下した。
 県は今回の訴訟で「国交相は法律上の根拠がないのに裁決をした」と主張した。国は過去の判例から、県の訴えが裁判の対象にならないとして退けるよう求めた。だが国がよりどころとする判例は、多くの行政法学者が見直すべきだと主張しているという。
 今回地裁が「門前払い」したからといって、県民の抵抗が終わるわけではない。玉城デニー知事は、軟弱地盤の改良工事のため国が申請した設計変更を認めない構えだ。
 米シンクタンクの論客が11月に「(新基地は)完成する可能性が低そうだ」と困難視する報告を書いている。工期延長や工費増大などを背景に、新基地に固執する国の論理が破綻していることを見抜いているのだろう。追い込まれているのは国側である。



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