<社説>ヤングケアラー 実態把握し支援策急げ


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 病気や障がいのある家族などを介護する18歳未満の子どもを「ヤングケアラー」と呼ぶ。日本では認知度が低く、実態が把握されていない。厚生労働省が初めて、全国の教育現場を対象にした実態調査をする。

 家族同士の支え合いは悪いことではない。しかし本来、大人が担うべき介護を肩代わりし、年齢や心身の成長に見合わない重い負担を負っている事例も見えてきた。子どもの学業や進路に悪影響を及ぼす問題である。現状を調べ、相談できる環境や負担軽減につながる支援策を講じてほしい。
 日本ケアラー連盟によると、ヤングケアラーとは慢性的な病気や障がいのある親、高齢の祖父母、幼いきょうだいなどの世話をする18歳未満の子を指す。社会的な認知度は低く、子どもは家族の障がいや病気について相談することに引け目を感じることも多いため、表に出にくい。
 国より先に自治体が調査に乗り出している。埼玉県が県内の高校2年生全員を対象にした調査によると、幼いきょうだいの世話を除き、介護に携わる生徒が1969人おり、4・1%を占めた。女子が約6割となる。ケアをしている相手は祖父母・曾祖父母が36%、母24%の順で、理由は「病気」が28%、「高齢による衰弱」20%、「身体障がい」15%だった。
 学校生活への影響(複数回答)は「なし」が41%となった一方で、19%が「孤独を感じる」、17%が「ストレスを感じている」と心身に悪影響を与えていることが分かった。さらに10%が「勉強時間が十分に取れない」と回答し、「睡眠不足」8%、「学校を休みがち」2%と深刻さをうかがわせる回答もあった。
 調査ではケアを始めた時期が中学生からで、頻度は毎日、食事の用意などの家事や見守り、外出補助が多かった。
 こうした実態は埼玉県だけではないだろう。大阪でも公立高校生を対象にした調査で20人に1人が家族を介護し、そのうち3割が毎日介護に携わっているという結果が出ている。
 しかし「介護は家族が支えて当たり前」という風潮が存在を隠してきたと言われる。岡山市が、難病で介護サービスが必要な父親に対し、同居する高校2年の娘の介護で補うよう求め、抗議を受けて撤回した。福祉の担当者でさえ存在が認識されていないのではないか。
 教育現場では生徒の様子に目配りをし、医療機関や介護現場は子どもの問題に注意し、利用できる行政サービスを伝えるなど手を差し伸べてほしい。
 この問題は家庭だけで介護を担うのは限界があることを示す。介護は社会全体で支えるとの前提が必要だ。ヤングケアラーは高齢化や核家族化
に伴い増えているとみられる。法的に位置付け支援をする英国の事例なども研究し、支援の仕組みをつくりたい。