<社説>非正規8ヵ月減 女性の「公助」が急務だ


社会
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 働く女性の悲痛な叫びが聞こえてきそうだ。

 総務省が発表した10月の労働力調査によると、アルバイトやパートなど非正規雇用で働く人の数は8カ月連続で減少した。男性と比べて女性の減少が目立つ状況が続く。
 県内の非正規労働者は2万2千人減の23万1千人だった。男女別に見ると女性は1万8千人減の15万4千人、男性は4千人減の7万7千人だった。男性と比べて女性の減少、つまり失業が目立つ状況が続いている。
 安倍晋三前首相が掲げた「女性活躍」は看板倒れだったことは明らかだ。菅政権は非正規雇用の女性の雇用維持だけでなく、コロナ禍で先行きが厳しい業種から、デジタル関連事業など需要の見込まれる職種に対応できる総合的な支援が急務だ。
 製造業に従事する男性への影響が大きかったリーマンショックより、コロナ禍は女性への影響が顕著だ。女性の就業が多い宿泊や飲食サービス、小売業を新型コロナウイルス感染拡大が直撃したことが要因とみられる。
 女性の雇用のうち、非正規は約6割に及ぶ。中でも宿泊や飲食サービス業に限ると8割を超える。多くの女性労働者が不安定な雇用状態に置かれている。
 7年8カ月に及んだ安倍政権は「女性が輝く社会」を成長戦略の柱の一つに掲げた。安倍氏は「400万人を超える雇用」を実現したとして、雇用拡大をアピールした。しかし、実際に拡大したのは350万人の低賃金かつ不安定な非正規雇用であり、その約7割は女性である。
 経済協力開発機構(OECD)加盟国の半数以上で、女性労働者のうち非正規が占める割合が減る中、日本は逆に非正規が増加している。
 企業の派遣受け入れ期間の制限をなくした改正労働者派遣法は、派遣労働者の待遇を改善することで安定した雇用環境を創出し、日本経済全体にも好循環をもたらす意義があると強調された。
 しかし労働者が派遣先の職場で働くことのできる期間を原則3年までとしたため、派遣先が派遣労働者を法的に「使い捨て」できるようになり、派遣労働者の状況は深刻化している。コロナ禍でこうした非正規労働者が、人件費抑制と雇用の調整弁の役回りを担わされる。
 沖縄の子どもの貧困率は、29.9%(2015年度)で、全国の2倍近い。3人に1人が貧困状態にある。ひとり親世帯では58.9%に上る。中でも母子家庭の貧困率は高い。母子家庭は、非正規で働く母親が多いため平均収入は少なく、貯蓄がない家庭も多い。
 新型コロナ禍は、こうした非正規、かつ母子家庭を直撃している。菅首相が掲げる「自助」のレベルをはるかに超えている。困窮世帯の親子が置き去りにされないよう、国は継続的な支援(公助)に取り組むべきだ。