<社説>外来機離着陸10倍 負担軽減に逆行している


社会
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 米軍普天間飛行場で固定翼の外来機の離着陸数が急増している。防衛省によると、2019年度は2678回で、17年度の236回と比べ10倍に達した。固定翼機は騒音が大きい。基地の負担が増している実態が浮き彫りとなった。

 防衛省は増加の理由として、調査初年度の17年度は滑走路の補修工事が行われた影響で飛来が抑制された可能性があるとしている。しかしそもそも外来機は受け入れるべきではない。にもかかわらず19年度は前年と比べても千回以上増えている。
 政府は普天間飛行場の負担軽減策として、空中給油機を山口県の岩国基地に移駐したり、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの訓練を県外に移転したりしてきた。しかしここまで外来機が増えては元も子もない。負担軽減に逆行している。
 航空機騒音規制措置(騒音防止協定)で規制されている午後10時すぎの夜間飛行も相次いでおり、騒音防止策は形骸化している。米軍機の運用激化は騒音だけでなく、墜落や部品落下などの危険性を一層高める。
 この状態を放置することは許されない。岸信夫防衛相は4日の閣議後会見で「航空機の運用による影響を最小限にとどめるよう、引き続き米側に協議を求めていく」と述べるにとどめた。これでは弱い。政府は、世界で最も危険な飛行場の一つだとして普天間飛行場の「一日も早い返還」を掲げている。その認識があるのなら、負担増の原因となっている外来機を飛来させないよう米側に強く求めるべきだ。
 今月1日には、米軍嘉手納基地にも、岩国基地から戦闘攻撃機FA18ホーネット11機が飛来した。同型の外来機が一度に10機以上、飛来するのは極めて異例だ。嘉手納基地では、在沖米海兵隊が格納庫などの新施設を開設したほか、外来機専用のひさし付き駐機場が整備されるなど外来機の受け入れ体制が強化されている。これも負担増だ。
 FA18は今年2月、給油口を覆うパネルを紛失し、落下した疑いがもたれている。緑ヶ丘保育園や普天間第二小などであったように、普天間飛行場周辺でも米軍機からの部品の落下は後を絶たない。訓練を県外へ一部移転しても、外来機を受け入れていたら、事故の危険性や騒音が増すことは一目瞭然だ。
 普天間飛行場の負担軽減ができない背景には日本政府の対米従属姿勢や弱腰外交がある。沖縄県はじめ全国知事会が求めている日米地位協定の改定ができないのもその一つだ。この姿勢を改めなければ、米軍は勝手放題に米軍基地を運用し、政府の言う「負担軽減」は空手形に陥るだろう。
 米軍は航空機の飛行規制措置すら守らないのだから、常駐機の飛行だけでも住民の負担は大きい。普天間飛行場は本来、一日も早く閉鎖すべき施設だ。それこそが実効性のある負担軽減策である。