<社説>日航機緊急着陸 同型機の徹底検査求める


社会
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 那覇発羽田行き日航904便ボーイング777が4日、離陸後に左主翼のエンジンでトラブルが発生し、那覇空港に引き返して緊急着陸した。

 日航は、エンジン前部で推力を出すために回転する「ファンブレード」の破損に伴う振動で留め具が飛行中に外れたことが原因の可能性があると発表した。
 同系列のエンジンを搭載した機体は日航が13機、全日空が24機保有している。国土交通省は6日、2社に緊急点検させた結果、異常はなかったと明らかにした。さらに7日付で飛行回数6500回ごとに部品を分解して実施する検査に加え、500回ごとに詳細な目視点検と触診をするよう促し、1500回ごとに肉眼で見えない損傷を確認できる非破壊検査をするよう求めている。
 それでも対策は十分とはいえない。羽田発那覇行き日航同系列機が緊急点検後の8日、油圧系統の異常で離陸直後に出発空港に引き返すトラブルを起こしているからだ。
 航空機事故は死亡率が高い。今回は最悪の事態をかろうじて回避したとはいえ、少なくとも同型機の運航を一時停止して、徹底的に検査して事故原因を特定すべきだ。
 「ハインリッヒの法則」によると、1件の重大事故の裏には29件の中程度の事故と、300件のひやりとする過失があるとされる。航空機事故にも通じる。
 4日に那覇でトラブルを起こした機体のエンジンは、米大手プラット・アンド・ホイットニー(P&W)製だ。同社のエンジンを搭載していたボーイング777―300型が、2016年、羽田空港で大韓航空機の左エンジンが離陸滑走中に壊れて出火する事故を起こしている。部品に製造ミスが発覚したのだという。
 ファンブレードについて、元JAL機長で航空評論家の杉江弘氏は18年の米サウスウエスト航空機のエンジン爆発事故を挙げ警鐘を鳴らす。
 同機は飛行中に左エンジンのファンブレードに疲労亀裂が生じて破損した。カバーが外れ、飛び散った破片が窓ガラスを割って乗客1人が死亡した。
 杉江氏は、そもそもファンブレードが破損した原因については「亀裂を点検整備で見逃したということだろう」と指摘している。
 航空機事故といえば、35年前の日航ジャンボ機墜落事故を思い出す。羽田発大阪行き日航123便ジャンボ機が群馬県に墜落し520人が死亡した。死者数は単独事故では世界の航空史上最悪だった。
 当時の運輸省航空事故調査委員会は、過去に起きた尻もち事故で、米ボーイングの作業員が機体後部の圧力隔壁の修理をミスし、日航、運輸省の担当者が見逃したことが原因と結論付けている。
 ミスを完全になくすことは並大抵ではない。だからこそ一大事故に至らないシステムづくりが求められる。