<社説>高校生の大麻汚染 実態把握と防止に全力を


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 高校生ら未成年者の大麻汚染が止まらない。警察など関係機関による実態把握と対応策が急がれる。

 県警が今年10月、大麻を所持していたとして県立高校の男子生徒を大麻取締法違反容疑で逮捕していた。
 県内では昨年、高校生12人が大麻取締法違反の罪で摘発され、若年層の深刻な大麻汚染が浮き彫りとなった。米軍属を通して高校生3人に大麻が渡るなど沖縄の特異なケースも明らかになっている。
 一連の高校生らの摘発を受け、薬物根絶への取り組み強化が確認された。それにもかかわらず、高校生が逮捕されたのは残念だ。若年層の大麻汚染が予想以上に広がっている可能性があることを私たちは認識しなければならない。
 20歳未満の未成年者における大麻汚染は沖縄だけのことではない。警察庁のまとめによると、大麻に絡む事件で警察が2019年に逮捕・書類送検したのは4321人だった。そのうち20歳未満が609人であった。今年上半期の大麻事件の摘発者数は2261人で20歳未満は428人に上っている。
 未成年者における薬物汚染の背景には大麻が1グラム当たり6千円で他の薬物に比較して安価で、簡単に入手できることがある。特にSNSなどネットを通じた売買が広がっているという事実がある。今回逮捕された高校生も「インターネットで、数千円で購入した」と供述している。
 ネット上での大麻など薬物売買の実態を覚知することは困難であろう。摘発を逃れるため、ネットでは大麻を「野菜」と呼んだり、大麻を直接手渡しする行為を「手押し」と表現したりするなど隠語を用いて売買することが本紙取材でも分かっている。
 一人の大麻使用者が100人単位でつながっている可能性を指摘する識者もいる。このような野放図な汚染拡大を放置することは許されない。ネット犯罪への対処で積み上げてきた手法も駆使し、違法な薬物取引を地道にチェックするしかない。
 大麻使用に対する罪の意識が希薄で、気軽に大麻を使用する未成年層が後を絶たないのも問題である。県警関係者は「大麻は比較的、害が少ないなどといった誤った認識が広がっている可能性がある」と指摘する。大麻を繰り返し使用することで脳の機能障害や無動機症候群を引き起こす恐れがある。大麻使用と絡んで未成年者が犯罪に巻き込まれる恐れがあることは言うまでもない。
 大麻使用の危険性を高校生ら若年層に伝える必要がある。警察だけではなく学校現場でも薬物に関する指導を徹底してほしい。
 現役高校生の逮捕に関係者は衝撃を受けているはずだ。しかし、手をこまねいているいとまはない。未成年者の大麻汚染をどう食い止めるか沖縄社会全体に課題として取り組むべき時期に来ている。