<社説>米軍部品落下調査終結 また地位協定に阻まれた


社会
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 3年前、宜野湾市の緑ヶ丘保育園の屋根に米軍ヘリの部品が落下した事故で、県警は「上空からの落下物とは特定できなかったが、その可能性を否定するものでもなかった」とする実験結果を発表し、調査を事実上終結した。玉虫色の結論で捜査を終えたことになる。米軍から調査の協力が得られず、今回もまた日米地位協定の壁に阻まれた。

 民間機による部品落下であれば、徹底した捜査が行われていたはずだが、航空特例法では米軍航空機由来の部品落下は刑事事件として取り扱えない。今回も、米軍の裁量任せで事案の真相解明に至ることはなかった。これでは子どもたち、そして県民の安全は守れない。原因究明のために日米地位協定や航空特例法を改める必要がある。
 事故は2017年12月7日午前10時20分ごろ起きた。ドーンという衝撃音が響き、屋根に透明な筒状の物が落ちていた。直前には米軍機の通過音がし、園舎上空を飛んでいたという目撃情報もあった。米海兵隊は筒が米軍ヘリの部品であることは認めたが、部品が紛失していないことや、当時使用していない部品であることなどを理由に部品落下を否定した。
 米軍が否定したことにより、ネット上などで緑ヶ丘保育園に対する「自作自演」などという誹謗中傷が相次いだ。園長や保護者らは悪意ある声にも負けず、子どもの安全を守りたいという親として当然の願いをかなえるため、「チーム緑ヶ丘1207」を結成して行政や市民団体に事故の全容解明を訴えてきた。
 保護者らの声が高まる中、県警は上空200メートルからの落下物と想定して実験をしたが、トタンの傷やへこみでは落下物との特定には至らなかった。かといって、周辺防犯カメラの確認や聞き込みなどから何者かが部品を園内に投げ込んだ可能性も否定した。「今できる全ての捜査は尽くした」として一連の捜査を終える方針だ。
 一歩間違えば、人命に関わる重大事故だったにもかかわらず、原因究明できないのは日米地位協定により日本側の捜査権が及ばないからだ。フライト記録や疑わしい機体の検分などが米軍の許可なしにはできない。特例法で航空機からの物の投下を禁じる日本の航空法も適用されない。
 米軍関連の事故が未解決のまま、被害者が泣き寝入りを強いられるのは緑ヶ丘保育園の事故にとどまらない。沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落した04年の事故も、16年に普天間飛行場所属MV22オスプレイが名護市安部の海岸に墜落した事故も「被疑者不詳」で捜査を終えた。県警は乗員の事情聴取や証拠品提出を米側に求めたが実現しなかった。
 沖縄に米軍基地の負担が集中し、米軍優位の関係が続く限り、「未解決事件」はなくならない。戦後続いてきた問題の根幹に切り込む取り組みが必要だ。