<社説>普天間爆音3次提訴 今度こそ根本的な救済を


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 米軍普天間飛行場の周辺住民4182人が25日、米軍機の夜間の飛行差し止めや騒音被害の賠償などを国に求める第3次の普天間爆音訴訟を那覇地裁沖縄支部に起こす。

 4千人を超す原告が求めるのは、静かで不安のない環境の中で暮らしたいというささやかで、当たり前の願いである。憲法が保障する生存権が侵害される住民の立場に寄り添い、今度こそ司法による根本的な救済を求めたい。
 原告数は第2次訴訟の提訴時からさらに千人増えた。年代別では40代が589人で最も多く、20歳未満の世代が911人を占める。子育て世代の訴訟参加が全体数を押し上げたとみられる。
 3年前の2017年12月には宜野湾市で緑ヶ丘保育園に米軍部品が、普天間第二小学校の運動場に米軍ヘリの窓が落下する事故が立て続けに起きた。子どもたちが安心して過ごすはずの場所が、危険と隣り合わせだという基地の島の異常さを改めて意識させられた。子を持つ親として危機感を募らせるのは当然だ。
 普天間飛行場からの爆音が日常生活を妨害し、精神的苦痛、睡眠妨害、高血圧などの症状を生じさせていることは、これまでの訴訟でも認められている。裁判所は「受忍すべき限度を超える違法な権利侵害」と違法性を認め、第1次は約3億6900万円、第2次は約21億2千万円の賠償を国に命じた。
 その一方で、飛行差し止めについては「第三者行為論」の前に、住民の訴えは退けられてきた。普天間飛行場で航空機を運航させ、騒音を生じさせているのは米国であるから、制限できる立場にない日本政府に差し止めを請求することはできないという門前払いの理屈だ。
 だがこれでは、最高法規であるはずの憲法も、日米安保の前には無力だと司法が自ら認めているに等しい。
 普天間飛行場の爆音は激しさを増している。防衛省によると19年度の外来機による離着陸回数は2678回で、前年度より千回以上も増加した。17年度に滑走路が補修され、負担軽減に逆行して基地機能の強化が進んでいる。
 最新鋭ステルス戦闘機F35やFA18戦闘攻撃機など普天間所属機以外が頻繁に飛来し、耳をつんざく騒音をまき散らしている。午後10時すぎの夜間飛行も相次ぎ、騒音防止協定は形骸化している。
 過去2次の司法判断は、爆音被害の歯止めになっていない。騒音発生の原因である航空機の飛行差し止めに踏み込まずして、被害の根本的な解決はない。周辺住民の生活や健康が犠牲になっていることを裁判所が認めながら、第三者行為論を盾に爆音の発生を野放しにするならば、住民に対する差別である。
 これまでの司法判断に忍従せず、三度訴訟を起こす住民の訴えは重い。裁判所は人権侵害から国民を救済するという責務に向き合うべきだ。