<社説>20年回顧・政治 沖縄の民意無視が顕著に


社会
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 沖縄の将来を左右する政治決戦である県議選が6月7日に実施され、定数の48議席中、玉城デニー知事を支える与党が25議席を占めた。翁長県政下で行われた前回より2議席減ったが、与党が過半数を維持した。

 最大の争点は、米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設の是非だった。一日も早い普天間飛行場の危険性除去のため唯一実現性のある方策だとして、野党の自民党が「建設容認」の姿勢を打ち出したことにより、対立軸はより鮮明になった。
 新基地建設に反対する当選者は全体の6割を占めた。改めて多くの県民が「ノー」の意思を突き付けた形だ。それでも政府は工事を強行している。昨年の県民投票や衆院沖縄3区補選、参院選などに続く「反対」の民意を無視する政府の姿勢は一層顕著になった。民主主義に反する暴挙と言うほかない。辺野古新基地を巡る国と県の裁判闘争も続いている。国は新基地建設を即刻断念すべきだ。
 県議選は、新型コロナウイルス感染症対策や、21年度末で期限を迎える沖縄振興計画への対応、子どもの貧困解消策なども争点となった。発足から2年となる玉城県政の中間評価にも位置付けられ、玉城知事は一定程度の信任を得た形だ。
 ただ、与党の現職が4人落選するなど与野党構成は伯仲(はくちゅう)に近い結果となった。玉城知事はこれまで以上に難しい県政運営を強いられている。
 今年は、次期振計に向けた議論や提言が活発化した1年でもあった。県は、現振計を検証した総点検報告書をまとめ、次期振計の必要性を明示した。11月には、従来にない新たな方向性として、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の推進を、沖縄振興の目標としても位置付けることを打ち出した。
 具体的には、SDGsに関する取り組みを実施する企業への税の減免措置や財政支援などを想定し、「沖縄らしいSDGs推進特区」を国に制度提案する。
 全国平均の7割にとどまる1人当たり県民所得や全国一低い正規雇用の割合など、自立型経済にはほど遠い現状がある。次期振計に向け、沖縄の山積する課題をどう解決するか、正念場を迎えている。
 そんな中で懸念されるのが政府による沖縄社会の分断策だ。来年度の沖縄関係予算は4年連続で総額3010億円を維持したものの、県や市町村の裁量幅が広い沖縄振興一括交付金は大幅に減額された。一方で国が市町村に直接投下する沖縄振興特定事業推進費は大幅に増額した。この傾向は県と市町村との分断をはらむ。
 菅政権は予算と基地問題は「結果的にリンクしている」との認識を示している。政府が次期振計に向けた構想を基地問題と絡め、県の自主性を損ねるようなことは、あってはならない。