<社説>新年を迎えて 自立へ共に踏み出そう


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 新年を迎えた。2021年の沖縄は、施政権返還(日本復帰)50年を1年後に控え、これから先の針路を決定する年になる。

 50年前の1971年11月、琉球政府は日本復帰後の沖縄の在り方をまとめた「復帰措置に関する建議書」を作成している。
 復帰運動の先頭に立った屋良朝苗主席は「建議書」前文にこう明記した。
 「沖縄は余りにも、国家権力や基地権力の犠牲となり、手段となって利用され過ぎました。復帰という歴史の一大転換期に当たって、このような地位からも、沖縄は脱却していかなければなりません」
 琉球併合、沖縄戦、米国統治など国家に利用された過去と決別し、二度と利用されないという表明だ。その上で、米軍基地は人権を侵害し生活を破壊する「悪の根源」と断じ、基地押し付けによる抑圧から解放され、人権が完全に保障されることを求めた。
 残念ながら現状は逆である。米国は72年に施政権を日本に返還するが、復帰後も日本政府の合意を得て在沖基地を自由使用し続けている。
 民意に反して名護市辺野古の新基地建設を強行するのは、今後も沖縄を利用し続けるとの宣言にほかならない。
 では「建議書」は何を訴えたのか。「はじめに」の項で県民福祉を最優先に考え(1)自治の尊重(2)平和希求(3)平和憲法下の人権回復(4)県民主体の経済開発―を掲げている。
 4本柱を実現するため、沖縄側が自己決定権を行使して新しい県づくりに取り組むことを表明した。国は沖縄側が立てた計画に責任を持って予算を付けるよう主張した。
 沖縄の振興開発計画の責任は最終的に国にある、という日本政府の枠組みとはまったく異なる発想である。
 しかし、国会は建議書を受け取る前に、与党自民党が数の力で沖縄返還協定を強行採決した。沖縄側の最後の訴えは届かなかった。
 現行の沖縄振興特別措置法(沖振法)は21年度末で期限を迎える。復帰50年以降の新たな沖縄振興を巡る作業が本格化している。もし政府が、沖縄振興を基地問題との駆け引き材料にしようとするなら断固として跳ね返さなければならない。半世紀前、先達が大国の手段として利用されることを拒否したことを忘れてはならない。
 県は今年、国に「新たな沖縄振興のための制度」を正式に提言する。国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の推進を、沖縄振興の目標として位置付けていくことを打ち出している。
 SDGsの枠組みを使うことは意義がある。SDGsの基本は人権であり、掲げている目標は既に建議書に盛り込まれている。
 肝心なのは、自立へ向け県民が困難を乗り越え、問題解決のために共に一歩を踏み出すことである。希望を持って取り組む年にしたい。